Journal of the Japan Petroleum Institute
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53 巻, 1 号
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総合論文
  • 松井 敏明, 室山 広樹, 菊地 隆司, 江口 浩一
    原稿種別: 総合論文
    2010 年 53 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    燃料電池は高効率,低環境負荷のエネルギー変換システムであり,これまで多くの研究·開発が行われてきた。その中で,作動温度200~600℃の中温作動燃料電池は高温形や低温形の利点を併せ持つとして期待されている。しかし,中温域で高いイオン伝導性,熱安定性を示す電解質材料が開発されていないという理由から,この燃料電池の研究例はほとんど報告されていない。本研究では固体酸とピロリン酸塩からなる新規な複合体電解質を作製し,中温域における電気化学的特性,結晶構造,熱挙動を検討した。CsH2PO4/SiP2O7複合体では,熱処理中にCsH2PO4とSiP2O7が界面で反応し,CsH5(PO42相の生成が確認された。この複合体はCsH2PO4単味と異なる導電率の温度依存性を示し,266℃で44 mS·cm−1という高い導電率を有した。これはCsH5(PO42がプロトン伝導相として働いた結果である。また,Cs塩の代わりにK塩やRb塩をプロトン伝導相に使用したMH2PO4/SiP2O7複合体(M=K,Rb)においても,同様な現象が観察された。CsH2PO4/SiP2O7複合体を電解質とした燃料電池は200℃において良好な性能を示し,この電解質材料が中温作動燃料電池へ使用可能であることが実証された。さらに,マトリックスによる複合効果を明らかにするために,CsH5(PO42を伝導相,SiP2O7およびSiO2をマトリックスとした複合体において,導電率,熱挙動,両成分間のぬれ性について検討を行った。熱分析の結果,複合体中のCsH5(PO42の融解および脱水縮合はマトリックスに強く依存した。CsH5(PO42/SiP2O7複合体は最も高い導電率を示し,CsH5(PO42とSiP2O7の接触角は非常に小さいことが確認された。これらのマトリックス依存性はCsH5(PO42とマトリックスの界面相互作用の違いに起因しており,SiP2O7がCsH5(PO42と良好な適合性を示すことを明らかとした。
  • 金 永成, 李 炳益, 日比野 高士
    原稿種別: 総合論文
    2010 年 53 巻 1 号 p. 12-23
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    高分子形燃料電池は100℃以下での作動が求められるため,それに起因するいろいろな課題を持っている:(1)アノード触媒に深刻な一酸化炭素被毒をもたらす,(2)過度な加湿条件を必要とする,(3)電極反応が円滑に進まないため高価な白金触媒を必要とする。近年,これらの課題を解決する目的で,中温·低湿度条件で高プロトン伝導率を示す材料の開発が盛んに行われている。この中でも,非含水系プロトン伝導体は水分がプロトン伝導に関与しないので,少なくとも原理的には100℃以上の温度域でも高プロトン伝導率を示す可能性がある。これまでに我々の研究グループでは,In,AlまたはMgをドープしたSnP2O7が150から350℃までの無加湿下でも上の要求を満たし,しかも中温作動燃料電池の電解質やイオノマーとして機能でき得ることを見出した。本論文では,SnP2O7系材料のプロトン伝導の概要,およびInドープSnP2O7を使用した中温作動燃料電池の開発状況を紹介する。
  • 大幸 裕介, 松田 厚範
    原稿種別: 総合論文
    2010 年 53 巻 1 号 p. 24-32
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    本総合論文では,メカニカルミリング法で作製した新規プロトン伝導性固体酸に注目した。まず,硫酸水素-リン酸水素系セシウム塩複合体の作製と相変化挙動について述べ,次にオキソ酸セシウム塩-ヘテロポリ酸系複合体のプロトン伝導性と水素結合ネットワークの関係について議論する。遊星型ボールミルを用いてCsHSO4とCsH2PO4をメカノケミカル処理することによって,Cs3(HSO4)2(H2PO4)とCs5(HSO4)3(H2PO4)2が生成した。プロトン導電率は温度の上昇によって増大し,180℃で2×10−3 S·cm−1に達し,冷却過程においても高い値を維持した。これは高い導電率を有するCs2(HSO4)(H2PO4)高温相が複合体中に室温でも保持されることが原因である。一方,種々のオキソ酸セシウム塩(Cs2SO4,Cs2CO3,CsHSO4)とリンタングステン酸(H3PW12O40·6H2O: WPA-6)をミリング処理することによって,プロトンの一部がセシウムで置換されたCsxH3−xPW12O40複合体が生成し,化学的耐久性と無加湿プロトン伝導性が向上した。特に,90CsHSO4·10WPA-6(mol%)複合体は,室温から180℃の広い温度範囲で無加湿で高い導電率(3.3×10−3 S·cm−1,100℃)を示すことが分かった。1H MAS NMRから,複合化によってHSO4とWPAの間に新しい水素結合が形成されることと,その水素結合距離と無加湿100℃における導電率の間に良好な相関性があることが示された。
  • Daniel Gillis, Mark VanWees, Paul Zimmerman, Ed Houde
    原稿種別: 総合論文
    2010 年 53 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    石油業界は,これまで経験したことがないような原油価格の変動や需給状況の変化に対処せざるを得ない状況に直面している。しかしながら,重質油の生産を抑制する代わりに,中間留分を増産したいという傾向自体は,何ら変わっていない。従来の水素化分解や接触分解(FCC)技術だけでは,ガソリンから中間留分への生産シフトの要望に答えることは困難であろう。そのような環境の下では,残査油を高転化率で軽質化し,中間留分を選択的に得る新技術の開発が望まれている。理想的には,コスト面でメリットが得られ,かつ実機性能が保証されるような新技術であるべきである。UOPは,そのような残査油を変換して中間留分を増産したいという要望に答えるため,最新のアップグレーディング技術を駆使し,Uniflexプロセスを開発した。この高転化型のスラリー床水素化分解技術は,安定した実機性能を有しており,UOPのUnicrackingTM技術とUnionfiningTM技術を採り入れたものである。このUniflexプロセスでは,残査油が90 wt%以上含まれる重質油に対して,中間留分得率として50 vol%を超える性能を示した。本報では,Uniflexプロセスの性能と経済性について,他の残査油アップグレーディング技術に対する優位性を提示し,さらに当技術の応用性についても紹介する。
一般論文
  • Mahdi Parvini, Bahram Dabir, Seyed Abolfazl Mohtashami
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 1 号 p. 42-54
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    非混合液体分散系を取り扱ったシステムは石油化学業界で広く用いられている。そして,石油化学の分野では界面熱·物質移動率は系全体の現象に強く影響を与えることが知られており,相間界面接触面積に依存している。本研究は垂直管における非混合液体分散系の数値流体解析(CFD)を行ったものである。二流体分散系に関しては二流体モデル(オイラー-オイラーモデル)が多相モデリング用に広く使用されており,特に適切な計算量で広範囲なホールドアップの詳細予測が必要な場合に使用される。連続相に水,分散相にケロセンを使用したCFDシミュレーション結果,FarrarとBruunの実験結果,ならびにAl-DeenとBruunの実験結果との比較を行った。これらのシミュレーションは乱流液体分散系において作用する抗力,揚力,乱流分散力,付加質量力等のさまざまな力の影響を確認するためにも行われた。最適なパラメーターの組合せを選定するため,これらの流体に作用する力を示すいくつかのモデルを使用したシミュレーションを行った。さらに,二つの異なる乱流モデルを使用したシミュレーションも行った。本研究の成果として,揚力が乱流分散力や付加質量力よりも重要であることが分かった。また,実験データと合致するシミュレーション結果をもとに,液液分散流における相間界面モデル化の指針を示すことができた。
  • 呂 仁国, 七尾 英孝, 小林 公博, 久保 朋生, 森 誠之
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    蒸気圧が低い合成炭化水素油(MAC)を用い真空中で潤滑試験し,摩擦面で潤滑油が分解して,水素,低分子量の炭化水素が生成することを見出した。摩擦により生成する金属材料新生面の化学活性に着目し,潤滑油の分解に対する新生面の化学的役割について明らかにした。本研究では,軸受鋼AISI 52100を用いて,合成炭化水素油MACを基油として,そのトライボ化学分解に対する各種化合物(窒素,硫黄,リンを含む化合物およびリンを含むイオン液体)の抑制効果を検討し,効果的な化合物を見出した。窒素化合物は分解反応の誘導期間を延ばした。リン化合物は気体生成速度を抑制するとともに,臨界荷重を高くした。リンを含むイオン液体は最も効果的な添加剤であり,気体生成速度の抑制と臨界荷重を著しく高くできることを見出した。摩擦面をマイクロXPSおよびTOF-SIMSで化学分析することにより,これらの添加剤の分解抑制効果は摩擦面に生成した金属塩によるものと推察した。
レター
  • 森本 正人, 佐藤 信也, 鷹觜 利公
    原稿種別: レター
    2010 年 53 巻 1 号 p. 61-62
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    超臨界水を用いてビチューメンや減圧残油などの重質油を改質する方法が提案されている。重質油を超臨界水に高分散させて熱分解することにより,効率良く改質できることが期待されている。そのため,この方法における最適な操作条件は,重質油と超臨界水の親和性が最高となる条件であると考えられる。本研究では,そのような条件を誘電率とハンセン溶解度パラメーターを用いて決定した。重質油に対する良溶媒または貧溶媒である汎用溶剤の各値から,超臨界水が重質油と高い相溶性を示すために必要な条件は,誘電率2.2から10.4 かつ,δh(ハンセン溶解度パラメーターの水素結合の項)10 MPa0.5未満であることを明らかにした。両条件を満たす温度圧力の領域は,410℃以上25.6 MPa以上に分布することがわかった。本研究で決定した超臨界水の最適条件は,最近報告された実験結果によって支持されており妥当と考えられた。
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