2025 年 68 巻 6 号 p. 252-258
本稿は,石油需要の決定要因の一つとなるEVの普及について考察し,移行期の石油流通機構の取り組み方の視座を提供することを目的とする。環境優位性を強みにした日本の自動車メーカーが,なぜ国内でEV市場を開拓できなかったのかをEVパラドックスとし,EV普及の遅れを導いた構造的要因を明らかにした。本稿では,EVの受容を阻害または促進する要因を,(1)環境意識,(2)ニッチ形成,(3)HV体制,(4)政策シグナル,(5)住環境と充電設備の五つから考察した。結論として日本のEVパラドックスは能力のわなと社会的 · 制度的硬直性に起因することから,EVへの移行はICEの代替として進むというよりも,経験と学習を通じて既存の市場に新たな市場を追加する形で段階的に進み,結果的に移行期が長期に渡る可能性を示唆した。これは,現在の流通機構構造の維持要因として機能するが,次の段階で代替に変化することを前提に,消費者の視点から持続可能な流通機構への変革が必要である。