抄録
糞尿処理の一方法として, メタン発酵をさせて, メタンガスを燃料として利用しようという試みがなされている。この場合の残渣には, 菌体をはじめ, 有効な栄養分が含まれていると推定され, 飼料として再利用することの可能性が考えられる。そこで, その場合の栄養価について検討した。
豚糞と鶏糞によるメタン発酵の残渣について検討したが, いずれも粗灰分を30%以上含み, 粗蛋白質含量は18~20%であった。豚糞のメタン発酵残渣は, 蛋白質の消化率代謝エネルギー0kcal/gであり, 生物定量法による蛋白価38であった。鶏糞のメタン発酵残渣は, これを2分し, 1方を110°C, 30分間オートクレーブ処理し, 生物定量法により蛋白価を測定したが, 両者ともほぼ0であった。
この結果から, 豚糞, 鶏糞の栄養素を, メタン発酵を通じて再利用するためには, メタン発酵残渣の消化率を高めることが必要である。また, 残渣中の灰分を除くことも重要である。