日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
鶏の臓器及び卵からのサルファキノキサリンの消失に関する動態
吉田 實能勢 憲英
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1985 年 22 巻 5 号 p. 245-255

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抄録

飼料もしくは飲水に添加して投与され,ブロイラーや産卵鶏の臓器及び鶏卵中に残留しているサルファキノキサリン(SQ)の投与中止後の消失経過を速度論的に検討したところ,4群に区分できることが明らかとなった。
腎臓,皮膚,脂肪を除く鶏肉や肝臓などの可食部および血液からの消失パターンは,SQが体内のある部位に貯蔵されていて前期の急速な消失経過の後に貯蔵部位から緩やかに放出されるという2区画モデルでよく説明された。消失パターンは次式で示される。
y=A1e-1.5586t+A2e-0.4816t
ただし,tは休薬後の日数,yはSQの残留量(ppm),A1,A2はそれぞれ前期と後期におけるSQ残留の初期値であって,臓器の種類,SQの添加量,投与日数等の条件によって異なる一定値である。
腎臓からの消失経過は,0.3日遅れの2区画モデルで説明され,次式で示される。
y=A1e-1.1400(t-0.3)+A2e-0.5350(t-0.3)
体内各臓器から放出されたSQは腎臓に送られて排泄されるので,消失は他の臓器より0.3日(約7時間)遅れて始まると考えると,時間の遅れが説明できる。この知見は,腎臓から尿への経路がSQの主要な排泄経路となっていることを示唆している。
脂肪と皮膚で示されている脂肪組織からの消失経過も2区画モデルで説明され,次式で示された。
y=A1e-1.3593t+A2e-0.3611t
この知見は,脂肪組織が貯蔵部位とはなっていないことを示唆するが,さらにデータを蓄積して解析することが望まれる。
鶏卵からの消失経過も次式で示される2区画モデルで説明できる。
y=0.937e-3.4431t+0.163e-0.2261t
腎臓と脂肪組織を除く可食部分からのSQの消失速度を示す生物学的半減期は,前,後期のそれぞれについて,0.45日と1.44日と計算される。これに対し,鶏卵からの消失の生物学的半減期は,それぞれ0.20日と3.07日と計算される。

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