日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
アメリカにおけるブロイラーの産業組織の変化と立地移動の制約条件
斉藤 修杉山 和男
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1991 年 28 巻 1 号 p. 37-46

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抄録
ブロイラーの生産構造では,伝統的なオープンカーテンの鶏舎からより一層飼料効率の改善と省力化に効果のある環境統御しうる鶏舎への移行があり,鶏舎は重装備化した。この重装備化は生産者の純利益を減少させることになったので,インテグレーターは契約生産者の支払い水準を上昇させて対応せざるをえなくなった。ほとんどのインテグレーターは直営型インテグレーションを展開していないが,これは参入のための必要資本額が増大しているのに対して,生産者の資金調達が限界に達したためである。これまでインテグレーターは生産段階を中心として,処理加工場の近くに他のプラントを集中させ,また生産効率の良好な生産者の規模を拡大させることによって,コーデネーションの程度を強化しようとした。しかし,生産の過剰傾向のもとで低コスト生産を持続的に追求することは,かえって産業全体としても市場成果を悪化させることになるので,インテグレーターは販売戦略を差別化や製品開発に転換している。このことは高付加価値の製品の増大や二次加工機能の充実によって,インテグレーションの程度を高めることになる。しかし,二次加工でも集中度でみれば寡占的競争構造が形成されており,またTyson FoodsやConAgraは合併によってGoldKistやHolly Farms Foodsよりも規模を拡大して市場地位を強めている。
ブロイラーも鶏卵と同様に遠距離輸送とコーンの調達ではコーンベルトに近接するのが有利である。しかし,ブロイラーでは移動の必要資本額が多額であるばかりでなく,鶏卵のインライン•システムのような大きな技術革新がみられないことが,コーンベルトへの立地移動の制約条件である。インテグレーターにとって立地上の不利性は,高付加価値の製品開発や市場での競争力の拡大によって吸収されつつあるといえよう。
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