日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
炭化水素酵母の給与におけるビタミンB12の欠乏によるふ化率の低下
多田 昌男妹尾 文雄村田 武久川崎 晃
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1972 年 9 巻 1 号 p. 17-24

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抄録
養鶏用飼料の蛋白質原料として炭化水素酵母 (以下, 酵母と略す) を種鶏に給与し, 酵母の給与が受精およびふ化に及ぼす影響を調査した。
酵母は, 対照飼料の魚粉の全量および大豆粕の一部または全量とおきかえて, 試験を実施したが, その結果は次のとおりであった。
1. 酵母を飼料中の魚粉の全量および大豆粕とおきかえて10, 15および20%給与しても, 受精率においては対照飼料と差がなかった。しかし, ビタミンB12を添加しない場合, 酵母区において入卵後18日目以降の死こもり卵が多い傾向がみられ, 酵母10%および15%区の対受精ふ化率はほぼ同じで, いずれも対照区の対受精ふ化率より劣った。また, 20%区の対受精ふ化率は両者の中間の成績であっていずれに対しても差は有意とはいえなかった。
2. 酵母中に含まれるビタミンB12の含量は2μg%で魚粉に比べてかなり少なく, 魚粉の全量を酵母で10, 15および20%おきかえた場合は, ビタミンB12の添加が必要である。
3. ビタミンB12の含量が不足した酵母添加飼料を給与すると, 生産卵中のビタミンB12の含量が低下することが認められた。
4. 受精卵中のビタミンB12の不足は, 対受精ふ化率を低下させる主な要因であることが認められた。また, ビタミンB12が不足した飼料を給与中の種鶏に対し, ビタミンB12を1羽1回1μg, 隔日に胸筋内へ注射した場合, 種卵のふ化率向上に効果があり, 初回注射後2日目からその効果が認められた。
以上の成績から, 魚粉の全量を酵母でおきかえた場合は, ビタミンB12の添加について十分注意する必要があり, また, ビタミンB12の不足はふ化末期における死こもり卵多発の要因となることが認められた。
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