Journal of Reproduction and Development
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技術短報
供試するウシ胚の違いが胚性幹細胞様コロニー形成に及ぼす影響について
伊藤 貴子小西 正人武富 敏郎板倉 はつえ矢澤 慈人青柳 敬人
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1996 年 42 巻 5 号 p. j29-j33

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抄録

ウシ胚性幹細胞(以下ES細胞)樹立のために,より効率的にES細胞様コロニーを得ることを目的として,供試する胚の発育ステージならびに体内または体外受精由来胚の違いとES細胞様コロニーの形成率の関係について検討した.(細胞培養開始7日目に出現した細胞境界が不鮮明で島状をなしている未分化様のコロニをES細胞様コロニーとした.)使用したウシ胚は5~6日目の桑実胚と,7~8日目の胚盤胞で,それぞれ体内受精由来胚と体外受精由来胚について検討した.桑実胚はバイオカットを用いて透明帯を除去した後に細胞塊を0.1%トリプシン+0.05%EDTAに約1分間浸漬し,ピペッティングにて1~ 数個の細胞塊に分離して培養した.胚盤胞はマニピュレーターを用いてバイオカットで内部細胞塊を含む胚の一部を取り出し培養した.培地にはダルベッコ変法イーグルMEM培地にグルコース,重炭酸ナトリウム,非必須アミノ酸,β-メルカプトエタノール,および20%子牛血清を加えたものと,支持細胞としてマウス胎仔繊維芽細胞を用いた.培地交換は培養開始2日目から毎日行った.桑実胚を用いた区では体内受精由来胚・体外精由来胚ともに培養開始7日目でES細胞様コロニー形成は全く見られなかった(0/17, 0/26).一方,胚盤胞を用いた区における培養開始7日目のES細胞様コロニー形成率は,体内受精由来胚で16.0%(4/25),体外受精由来胚では17.1%(7/41)であった.以上の結果より上記培養法においてより効率的にES細胞様コロニーを得るには,桑実胚よりも胚盤胞を用いるほうが有効であり,体内受精由来胚と体外受精由来胚とでES細胞様コロニー出現率において有意な差がないことが示された.

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© 1996 Society for Reproduction and Development

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