日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P2-40
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放射線治療生物学(感受性・高LET・防護剤・増感剤・ハイパーサーミア・診断)
胎児期放射線適応応答生き残りマウス(成体)の致死線量照射への反応
*王 冰大山 ハルミ尚 奕田中 薫中島 徹夫根井 充
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抄録
「研究背景」齧歯類動物において、前照射による、本照射致死への顕著な抑制効果の最初の発見は、1990年に発表された米沢らによるICRマウスを用いた研究であった。その後、2001年に大山らは、C57BLマウスを使い、ほぼ同様の照射条件で、いわゆる「米沢効果」の検証に成功した。即ち、0.5Gyで照射した6週齢のマウスは、2週間後に放射線抵抗性を獲得し、致死線量6.5Gy本照射後の30日間の生存率が、0%から77%までに増加した。一方、王らはICRとC57BLマウスにおいて、胎児期における放射線適応応答の存在をそれぞれ1998 年と 2000年に見出した。即ち、妊娠11日目に0.3Gyの低線量前照射を行うと、翌日の高線量3Gyでの本照射による胎児死亡と奇形発生が著しく軽減された。しかし、適応応答で生まれ、生き残ったマウスには、発育遅延と行動異常が見られた。そこで今回、胎児期放射線適応応答で生き残り、成熟したマウスが、致死線量の照射を受けた時、どう反応するのかについて検討を行った。
「材料・方法」胎児期適応応答で生き残った6週齢のC57BLマウスを用いて、0.5Gyの前照射を8週齢目に実施し、6.5Gyの致死線量照射への影響について、30日間の生存率を指標として検討を行った。また、胎児期に適応応答を誘発する0.3Gyのみを照射したマウスでも、上記と同様な実験を行った。
「結果・結論」胎児期適応応答で生き残ったマウスの6.5Gyの致死線量に対する放射線感受性は、非照射群に比べ有意に高くなった。また、0.5Gyの前照射により2週間後に見られるはずの放射線抵抗性の獲得は確認されなかった。一方、非照射群に比べ胎児期に0.3Gyの照射のみを受けたマウスでは、致死線量に対する放射線感受性が微かに高くなったが、0.5Gyの前照射による放射線抵抗性の獲得は認められた。胎児期の適応応答で生まれ、生き残ったマウスにおける放射線への生体反応は正常マウスと異なることが明らかになった。
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© 2006 日本放射線影響学会
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