日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S14-5
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シンポジウム14 適応拡大する毒性オミクス
Percellome Projectの進捗 -単回および新型反復曝露の比較による予測性向上-
*菅野 純相﨑 健一北嶋 聡
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抄録
Percellome Projectは定量的網羅的に化学物質投与時の遺伝子発現変動を測定し、独自の3次元表示を活用したインフォマティクスを用いてのネットワーク(NW)の抽出・解析とカタログ化による毒性評価・予測体系の構築を進めている。現在、マウス肝、肺、海馬等の約370実験のデータベースを更新中である。
複数の物質の変動遺伝子リスト(GL)のANDやOR計算からNWの効果的な描出が可能とっている。更に、近年展開している「新型反復暴露実験」において過渡反応(暴露の都度誘導される速い変化)、及び、基線反応(暴露を重ねるに連れ発現値の基線が変動する反応)の組み合わせにより、四塩化炭素型の物質、バルプロ酸型の物質、等、反復投与のNW形成の実態の複雑さが明らかとなってきた。共通分子基盤に、eif2及びRICTORが関わる小胞体ストレス、第Ⅰ相代謝、第Ⅱ相代謝、等、による精細な分類と力価比較が可能となったことを報告する。また、シックハウス症候群指針値レベルの極低濃度吸入に関して、異なる物質が海馬に共通したNWを誘発し、情動認知行動異と関連すること、その上流に肝と肺からの二次伝達物質としてのサイトカインの関与がより明瞭になったことを報告する。
Percellomeデータベースのデータハンドリングが向上し、個別の物質の毒性NWの網羅的な同定はより容易に行えるようになった。新型反復暴露と多臓器連関のデータ解析と合わせることにより、単回曝露データからの反復曝露時の毒性の予測の可能性と限界がよりはっきりしてきたことを、事例をもって報告する。(本研究は厚生労働科学研究費補助金等による)
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© 2016 日本毒性学会
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