日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P2-87
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放射線応答・シグナル伝達
ヒト造血幹細胞の放射線感受性における酸化ストレス応答機構の関与
*加藤 健吾高橋 賢次門前 暁丸山 敦史伊東 健柏倉 幾郎
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抄録
【目的】放射線によるDNA損傷過程の一つとして、細胞内で発生する活性酸素による損傷経路が知られている。また、造血幹細胞は放射線感受性が高く、幹細胞にとって抗酸化システムによる活性酸素の制御が極めて重要である。特に酸化ストレス応答遺伝子であるNrf2転写因子による活性酸素の制御は重要であり、酸化ストレス応答タンパク質および異物代謝第二相酵素群の発現を統一的に制御する。本研究では、X線曝露ヒト臍帯血由来CD34+細胞を用いて、酸化ストレス応答遺伝子であるNrf2によって誘導されるHO-1およびNQO1の応答を検討した。さらに、X線曝露造血幹細胞の放射線感受性との関連性について検討する。
【方法】本研究は、弘前大学医学研究科倫理委員会の承認を得て行った。母親のインホームドコンセントが得られた正期産の臍帯血を採取した。臍帯血は採取後24時間以内にリンホセパールに重層・遠心後、CD34+細胞(造血幹細胞)を分離・精製した。X線を2 Gy照射後、サイトカイン非存在下で6時間インキュベート後にRNAを抽出した。HO-1及びNQO1の測定は、定量的リアルタイムPCRで行った。また、この細胞を遺伝子組換ヒトサイトカイン(GM-CSF, G-CSF, EPO, IL-3, SCF)を含むメチルセルロース培地に懸濁し、X線照射後14日間培養した。培養後、コロニーを白血球系、赤血球系及び混合系前駆細胞にそれぞれ分類して計数した。
【結果・考察】X線曝露ヒト造血幹細胞における総コロニー数は、2 Gy照射した場合、非照射群に比べ83%減少した。また、HO-1, NQO1 mRNAの発現量は、非照射に比べて有意に増加した。このことから、造血幹細胞の放射線感受性と、放射線照射によるヒト造血幹細胞におけるHO-1, NQO1の発現との間に関連性が存在する可能性が示唆された。現在、このHO-1, NQO1及びその他の酸化ストレス応答遺伝子の発現の程度や発現量の増加と放射線感受性の個体差との関係について検討している。
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© 2009 日本放射線影響学会
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