抄録
現在広く使用されている抗腫瘍薬としてDNA傷害性薬剤、微小管作動性薬剤があるが、これらの薬剤によって処理された腫瘍細胞は分裂期に長期に停止し、分裂期から直接死滅することを私達はこれまでの動態解析の研究によって示してきた。この細胞死は分裂期崩壊(mitotic catastrophe)と呼ばれ、放射線による腫瘍細胞死もこの様式をとることが多い。私達は分裂期崩壊は細胞が分裂中期に停止する時間と相関することを見出し、紡錘体チェックポイント機能が長時間(10時間以上)活性化していることが必要であることを明らかにした。長時間分裂期に停止すると、どのような分子機構によって分裂期崩壊が誘導されるのか、またその機構がなぜ癌細胞に特徴的に作動するのかについて述べ、それに基づき薬剤抵抗性の新たなメカニズムについて議論を行いたい。