日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: PA-22
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A DNA損傷・修復
DNA二本鎖切断再結合におけるATMと53BP1の役割
*井原 誠小林 純也栗政 明弘小松 賢志工藤 崇
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キーワード: DNA二本鎖切断修復, ATM, 53BP1
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抄録
 放射線感受性の原因はDNA二本鎖切断修復の欠損あるいは誤修復の昂進によると考えられる。DNA二本鎖切断修復として相同組換え修復HRと2種類の非相同末端結合NHEJが存在する。放射線誘発DNA二本鎖切断の修復には非相同末端結合が優勢であり、また、相同組換え修復にはATMが関与していることが知られている。これらの修復系相互の関係は明らかになっていないが、最近53BP1はHRとNHEJの選択を調節している事が報告された。すなわち、BRCA1欠失細胞ではHRの欠損により放射線感受性が昂進する。この細胞の53BP1をノックアウトすると感受性は回復する。これはDNAに結合した53BP1がBRCA1/CtIPの働きを阻害しているが、53BP1欠損によりCtIPが機能する為と説明されている。BRCA1欠損細胞で見られる53BP1欠損によるHRの促進はATM依存性である。  我々は、Ku蛋白欠失による非相同末端結合能欠損STEF細胞とRNAiによる53BP1ノックダウン法を用いてATMと53BP1 のDNA二本鎖切断再結合における働きを解析した。  STEF細胞の53BP1をRNAiによってノックダウンすると、生存率が高くなった。この細胞のATM を阻害すると生存率は低下した。この結果は53BP1ノックダウン細胞ではATMによる相同組換えが昂進している事を示している。現在、レポーター遺伝子を用いた相同組換え能測定およびI-SceI誘導DNA二本鎖切断修復について解析を進めている。
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© 2010 日本放射線影響学会
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