日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: S3-1
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シンポジウム3 放射線誘発白血病:原爆疫学・分子メカニズムから予防法の開発まで
原爆被爆者における白血病・MDSなど血液疾患の疫学と病態
*岩永 正子
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抄録
白血病は、原爆被爆者に放射線の影響が最初に現れた悪性腫瘍である。白血病の病型のうち、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)において、放射線による過剰死亡リスクが明らかとなった。ただし、被爆者に増加した白血病細胞の形態と一般集団の白血病細胞の形態とに違いは認められていない。いずれの病型も1950年代にピークに達し、その後減少したが、全く終息したわけではない。最近の放射線影響研究所による1950-2000年の死亡情報に基づく白血病のリスク解析では、若年被爆者においてAMLの過剰リスクが上昇傾向にあることが観察されている。近年、白血病の治療は劇的に改善している。罹患情報に基づく解析であれば、さらなる過剰リスクがあることが予想される。骨髄異形成症候群(MDS)は、血球の形態異常を特徴とする造血幹細胞異常疾患で、2000年に血液腫瘍の範疇と見なされるようになった。MDSの約25-30%が経過中に白血病(多くはAML)に移行し、一般的に前白血病と認識されている。白血病同様MDSも、染色体異常が病態と密接に関連している。しかし臨床的に両疾患は異なる部分が多く、原爆被爆者における白血病リスクを単純にMDSに外挿することはできない。長崎大学と放射線影響研究所は、数年前よりMDSの詳細な疫学研究を共同で行っている。これまでの解析において、あきらかに距離・線量依存的なMDSのリスク増加を確認している。MDSは高齢者に多い疾患である。被爆者の高齢化によって今後も発症数が増加することが懸念される。本発表では、白血病とMDSの病態ならびに発症リスクの類似点と相違点について、これまでの知見と最新の研究成果を交えて紹介する。
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© 2010 日本放射線影響学会
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