抄録
本研究ではボロン酸基を側鎖に有するポリマーを用いて糖濃度応答性インシュリン放出システムを作製することを目的とした。ボロン酸基は糖等の多価水酸基化合物と結合解離することが知られている。
ここではボロン酸基を有するポリマーゲルとしてメタクリルアミドフェニルボロン酸、アクリルアミド、N, N'-メチレンビス(アクリルアミド)を共重合した。次にグルコン酸にてヒドロシキル化した牛インシュリンをこのゲルに加え、ボロン酸ポリマーに結合させた。このゲルを液クロ用カラムに詰め、溶出液中のグルコース濃度を200mg/dlと80mg/dlに交互に交換した。ボロン酸基に結合した修飾インシュリンはグルコースと置換反応により放出し、その濃度変化は溶出液のグルコース濃度変化に繰り返し応答した。ON-OFF実験において放出した修飾インシュリンは0.38mg/cm2・hr. であり生体内埋め込みを考える上で十分な値であった。