抄録
アルミニウム合金AC2B-T6相当をニアドライ潤滑条件下で2次元切削し,溶着の発生および成長機構を検討した.溶着生成が大きい場合の切りくずは工具との擦過面側に凸形状を有したささくれ部,および塑性変形した加工硬化層が観察される.この加工硬化層が切りくずから分離する際に,切りくずが工具すくい面上の溶着部に引っ張られ,ささくれ部が形成されると考えられる.溶着生成が大きい超硬工具およびDLCコーテッド工具では,溶着部と工具すくい面との界面にアルミニウム合金成分であるMg,Siなどが偏在しており,溶着発生の起点となっていることを示唆している.さらに,DLCコーテッド工具のDLC膜は,溶着との界面から深さ1nm付近の極表面においてグラファイト構造であるsp2結合が強い膜質となっている.これはダイヤモンド構造であるsp3結合に比べて耐溶着性が劣ることを示唆しており,DLCコーテッド工具での溶着生成の一因であると推定される.