抄録
近年,マイクロデバイスの高集積化に伴い,シリコンウエハへの高平坦化の要求はよりハイレベルになり,さらにデバイスの多層化や高性能化の進展により,ナノトポグラフィーが品質上重要視されてきている.ウエハのスライス工程では,切断時の“そり”精度やナノトポグラフィーが,ウエハ最終品質に大きく影響するため,その向上が重要課題として追究されている.しかも,前世代のウエハよりも大口径化しているにもかかわらず,低コストで高品位な加工を行うという矛盾した課題を解決していく必要がある.そこで本研究では,上述したような背景に鑑み,そり精度や近年注目されているナノトポグラフィーに関して,マルチワイヤソーにおける重要な課題の一つである,装置上の静的精度や熱変形などの機械的要因から検討を加えた.その結果,テーブル送り精度はそり精度およびナノトポグラフィーに影響しており,テーブルガイドの真直度を向上させることによって,それらの精度を改善できることを明らかにした.また,フレームの熱変形特性を明らかにし,温調クーラントの制御と低熱膨張材の採用によって,その熱変形特性を改善できることを示した.