抄録
本研究では,焼結鋼の旋削加工における工具刃先逃げ面温度と仕上げ面粗さの関係を調査した.焼結鋼と比較材料である炭素鋼を乾式と湿式条件下で加工を行い,CBN工具とセラミック工具の工具刃先逃げ面温度を光ファイバ型2色温度計で測定した.乾式切削でのCBN工具の工具刃先逃げ面温度は炭素鋼より硬度が低い焼結鋼で50-120℃程度高くなった.また,熱伝導率が高い工具や水溶性クーラントを用いると工具逃げ面刃先温度の上昇を抑制できた.クーラントによる工具刃先逃げ面温度の抑制効果は,熱伝導率が大きい工具ほど顕著である.工具の種類によらず工具刃先逃げ面温度が上昇すると粗さが減少した.また,工具刃先逃げ面温度が同等であれば,乾式より湿式で切削した方が良好な仕上げ面が得られた.