抄録
本研究は,工具表面にマイクロ・ナノメートルオーダの微細なテクスチャを作製し,そこで発現する摩擦の低下の作用を応用することで,優れた加工性を持った切削工具を開発することを目的としている.テクスチャによる酸化の影響について検討するため,ガスを吹きかけながらの切削実験および雰囲気を変化させた状態でのボールオンディスク型摩擦摩耗試験を行った.アルミニウム合金の旋削加工実験を行った結果,空気および酸素を吹きかけた場合にテクスチャによる効果が強く表れた.一方,アルゴン中で,その効果は小さい.摩擦摩耗試験を行った結果,雰囲気に酸素が存在する場合に摩擦が小さくなることがわかった.また切削実験と同様に,空気中,酸素中で,テクスチャによる摩擦の減少が見られた.以上の結果より,テクスチャによって摩擦が減少する要因の一つとして,酸化の作用が存在することがわかった.