抄録
A群レンサ球菌(Group A Streptococcus pyogenes; GAS)は,咽頭炎・扁桃炎の起因菌として古くから知られている。1980年頃から侵襲性および劇症型GAS感染症等の重症化例が報告されているが,重症化に転じる機構は不明であり,したがって予防法や治療法は確立されていない。侵襲性および劇症型GAS感染症の発症には宿主細胞への侵入,自然免疫と獲得免疫の回避,各種組織への伝播と外毒素の産生が必須であると考えられる。そこで本研究では,劇症型GAS感染症患者由来株から新たな侵入因子を同定し,さらに免疫回避に寄与する分子群を同定した。その結果,血清型M1およびM3由来株から,それぞれGASの組織への付着・侵入に寄与するFbaAおよびFbaBを見出した。また,補体免疫の中心的な役割を担うC3bおよびC5aを分解するGASプロテアーゼ群を同定し,自然免疫系を回避する機構について解析した。その結果,GASは分泌型システインプロテアーゼSpeBの作用でC3およびC3bを分解し,オプソニン化を妨げることが明らかになった。さらに,菌体表層に局在するGAPDH分子とセリンプロテアーゼScpAの協調作用で走化性因子C5aを消化し,好中球の遊走阻害を果たすことが示された。