2017 年 19 巻 4 号 p. 145-154
イネ品種「密陽44号」の斑点米カメムシ抵抗性の特徴を,籾の登熟段階およびカメムシの選好性から検討した.さらに圃場で3カ年栽培し,斑点米カメムシ自然発生条件下での抵抗性効果を検討した.抵抗性の特徴は,出穂10日後と20日後の稲株に加害特性の異なる2種のカメムシ(クモヘリカメムシ(籾の鉤合部を選択して加害,乳熟期前後の籾を加害),ホソハリカメムシ(籾の部位を選択せず加害,糊熟期を中心に幅広い登熟段階を加害))をそれぞれ放飼する集団検定法で調査した.斑点米率は籾の開花順序に基づいて着粒部位を分けた区分毎に調査するとともに,籾の登熟段階の指標として籾の硬度を測定した.その結果,「密陽44号」は出穂20日後に両種のカメムシに対して安定した抵抗性を示した.一方,出穂10日後では,クモヘリカメムシに対して供試年間で抵抗性にばらつきがみられ,ホソハリカメムシに対しては抵抗性がみられなかった.籾硬度と斑点米率の関係でも,両カメムシ種に対して負の相関がみられ,クモヘリカメムシに対してはある程度籾硬度が高くなると「あいちのかおりSBL」と同程度の硬度であっても斑点米率が低くなる関係がみられた.これらのことから,抵抗性は籾の登熟とともに高まり,ある程度登熟がすすんだ段階から安定すると考えられた.一方,ホソハリカメムシではいずれの籾硬度においても「あいちのかおりSBL」よりも斑点米率が低い関係がみられた.集団検定時に寄生虫数を調査した結果,クモヘリカメムシに非選好性がみられ,同種に対しては抵抗性機構が非選好性を伴うと考えられた.一方,ホソハリカメムシでは非選好性がみられなかった.カメムシ2種における上述の籾硬度と斑点米率の関係の違いは,この選好性や両種が好んで加害する籾の登熟段階の相違が影響していると考えられた.また,抵抗性の効果はクモヘリカメムシとホソハリカメムシがそれぞれ優占した自然発生条件下の圃場でも確認された.