2024 年 15 巻 1 号 p. 30-35
Fibrin monomer complex(FMC)とplasmin-α2-plasmin inhibitor complex(PIC)を用いて,回路内凝固に対する凝固線溶系の関連性を検討した。2016年1月〜2023年9月31日までにCRRTを施行した53症例を凝固群・非凝固群に分別し,CRRT開始前の測定値,およびCRRT開始後2日目の凝固および線溶活性の変化率を比較した。CRRT開始前,凝固群のFMCは有意に高値で,カットオフ値は150μg/mLであった。CRRT開始後,凝固群ではFMC変化量とPIC変化量分布で正の相関傾向が消失し,さらにPlasminogen変化率とPIC変化率の正の相関も消失した。以上の結果より,CRRT開始前の凝固群では凝固過剰状態であり,CRRT開始後は凝固系と線溶系の連携が乖離し,さらにplasminogen活性化障碍などにより線溶系活性化が抑制され,凝固が助長したと推察された。CRRT開始前FMC ≧150μg/mLが回路内凝固予測の指標となり,CRRT開始後は線溶系抑制の制御が凝固防止に重要と思われた。