日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
15 巻, 1 号
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総説
  • 澤田 真理子
    2024 年15 巻1 号 p. 2-7
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    血液浄化療法を施行するには,安全に留置・管理でき,治療中断のないバスキュラーアクセスの確保が重要である。とくに新生児では,カテーテルの穿刺・留置技術の習熟,患児に合わせた留置部位・先端位置の選択・調整,カテーテルの管理方法などに新生児に適した管理を要する。なかでも,透析用カテーテルの選択は極めて重要である。一方で,新生児における透析用カテーテルに関するデータは非常に少ない。米国では,新生児に透析用カテーテル7Fr を使用するよりも,中心静脈カテーテル6Frを代用する方が合併症の発症率が低く,安定して透析を行うことができると報告された。また,欧州では,中心静脈カテーテル4 〜5Fr の代用が主流となっている。国内では,透析用カテーテル6Frが市販され,国内では新生児血液浄化療法を安全に実施できる状況にある。ただし,おおむね体重2kg 未満の児では,中心静脈カテーテルの代用が必要である。

  • 山口 晃典, 三田 篤義, 園田 光佑, 今村 浩, 上條 祐司
    2024 年15 巻1 号 p. 8-16
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    重症患者の腎代替療法における血圧低下や除水困難に対し,長時間透析だけでなく,高Na透析・低温透析・無酢酸透析・高Ca透析など複数の透析手法を併用するmultimodal approachの有用性が報告されている。2000年のSchortgenらの報告以降,手法は徐々に発展し,生命予後を改善する可能性が報告されている。間欠透析の欠点であった循環動態不安定化が軽減されるため,今後,間欠透析やcontinuous renal replacement therapy(CRRT)の選択時には,循環動態だけでなくCRRT traumaを考慮した使い分けが重要となるかもしれない。2019年以降,当院ICUでもこの対応を導入した。高Na透析の代用にNaCl持続静注を用い,CRRTにも応用しているが,とくに限外濾過除水に伴う多大なNa喪失に配慮し管理している。導入後よりさまざまなアウトカムの改善が認められている。

  • 仲村 佳彦, 山﨑 慎太郎
    2024 年15 巻1 号 p. 17-22
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    プレセプシン(presepsin:P-SEP)は本邦で開発された敗血症のバイオマーカーであり,保険収載され,広く臨床現場で用いられている。P-SEP は敗血症の診断に対しては単独での診断は困難であり,診断補助マーカーとして位置づけられている。一方で,さまざまな術後患者の感染症のモニタリングおよび予測にP-SEP が他のバイオマーカーよりも有用であることが近年本邦からいくつか報告されている。さらに,急性腎障害,播種性血管内凝固症候群といった敗血症に合併すると死亡率が上昇する臓器障害との関連が報告されており,敗血症患者の重症度評価およびモニタリングとしても有用である。加えて,P-SEP は抗菌薬中止基準に活用できる可能性があり,これらの知見を本総説で概説する。

原著
  • 白井 邦博, 小林 智行, 石川 倫子, 村上 博基, 佐藤 聖子, 平田 淳一
    2024 年15 巻1 号 p. 23-29
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】持続的腎代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT)中の重症患者に対する1.5g/kg/日以上の高たんぱく質投与の効果について,後方視的に検討した。【方法】第7〜10病日までの投与たんぱく質量が1.5g/kg未満のL群:52例と1.5g/kg以上のH群:53例を比較した。【結果】CRRTは48〜72時間の初回設定でH群がL群に比して有意に浄化量が多かった。投与たんぱく質は,第4病日以降でH群が有意に多く,第10病日はH群1.8g/kgとL群が1.1g/kgであった。目標エネルギー量に対する充足率は,第8と第10病日でH群が有意に高率であった。血清アルブミンは第14と第21病日でH群が有意に高値であった(p<0.05)。Functional independence measure(FIM)利得はH群(57.0点)がL群(29.0点)に比して有意に高かった(p<0.01)。【まとめ】1.5g/kg/日以上のたんぱく質投与によるactives of daily living(ADL)の向上が示唆された。

  • 金城 紀代彦
    2024 年15 巻1 号 p. 30-35
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    Fibrin monomer complex(FMC)とplasmin-α2-plasmin inhibitor complex(PIC)を用いて,回路内凝固に対する凝固線溶系の関連性を検討した。2016年1月〜2023年9月31日までにCRRTを施行した53症例を凝固群・非凝固群に分別し,CRRT開始前の測定値,およびCRRT開始後2日目の凝固および線溶活性の変化率を比較した。CRRT開始前,凝固群のFMCは有意に高値で,カットオフ値は150μg/mLであった。CRRT開始後,凝固群ではFMC変化量とPIC変化量分布で正の相関傾向が消失し,さらにPlasminogen変化率とPIC変化率の正の相関も消失した。以上の結果より,CRRT開始前の凝固群では凝固過剰状態であり,CRRT開始後は凝固系と線溶系の連携が乖離し,さらにplasminogen活性化障碍などにより線溶系活性化が抑制され,凝固が助長したと推察された。CRRT開始前FMC ≧150μg/mLが回路内凝固予測の指標となり,CRRT開始後は線溶系抑制の制御が凝固防止に重要と思われた。

  • 高橋 学, 鈴木 泰, 星 眞太郎
    2024 年15 巻1 号 p. 36-41
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    血球細胞除去用浄化器「アダカラム®」は2000年に国内において活動期潰瘍性大腸炎の寛解導入目的として保険収載された血液浄化用カラムである。今回アダカラムの敗血症治療に対する適応拡大目的で行われた治験に当施設も参加したため,その使用経験を報告する。当施設からは敗血症患者が計9例登録され,症状が増悪した2例が治験を途中で中止した。施行において重篤な有害事象はなく,1例でアダカラムの施行中に血圧の低下を認めた。登録した9例の登録日のAPACHEⅡスコアは29.4±3.8で,登録日のSOFAスコアは8.7±1.1,中止した2例を除いた7例の第7病日のSOFAスコアは4.0±1.3で有意な低下を確認した(p=0.0165)。測定した他のマーカーでも改善を確認したが,本試験は非劣勢試験であることと,症例数が少ないことからこれらの数値の改善がアダカラムによる効果であるかについては,今回の結果だけから言及することは難しいと考えられた。

  • 森山 和広, 中村 智之, 西田 修
    2024 年15 巻1 号 p. 42-47
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    敗血症患者に対する顆粒球吸着カラムの安全性および有効性を評価した多施設で施行された治験の一部データを著者らの施設の症例に限定して解析した。【方法】敗血症と診断され,APACHE Ⅱスコアが17〜34点の患者を対象とした。顆粒球吸着カラム(治験名称G-1)による直接灌流法(G-1-DHP)は,ICU入室3日以内に計5本を施行した。主要評価項目は,ICU入室時から7日間のSOFAスコアの変化とし,安全性の評価項目は有害事象および28日後の死亡率とした。【結果】登録患者は20例,年齢[中央値(四分位範囲)]は,72.5(68.3〜75.8)歳,APACHEⅡスコア[中央値(四分位範囲)]は23.5(20.0〜28.8)であった。G-1-DHPにより,顆粒球の吸着除去が認められた。SOFAスコアは中央値8点から7日後には3点へと有意に低下した(p<0.01)。G-1-DHPに起因する有害事象は認められず,全例が28日生存した。【結論】G-1-DHPは,敗血症に対し臓器障害の進展抑制に寄与する新たな治療法として期待される。

  • 山﨑 慎太郎, 松本 舞, 城尾 和司, 山内 和也, 鳩本 広樹, 仲村 佳彦, 石倉 宏恭
    2024 年15 巻1 号 p. 48-53
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的はcontinuous kidney replacement therapy(CKRT)時に使用するAN69ST膜とPMMA膜のnafamostat mesylate(NM)投与下におけるfilter lifetime(FLT)の違いを明らかにすることである。【対象と方法】患者は2018年12月から2023年2月に当施設に入院した敗血症患者のうち,CKRTにAN69ST膜かPMMA膜のいずれかを用いて導入した症例で,初回の回路を対象とした。2群間のNM投与量,回路内activated clotting time(ACT),FLT,24時間以内の回路内凝固の発生率を比較した。【結果】対象は45例で,AN69ST群が26例,PMMA群が19例であった。NMの投与量はAN69ST群が30(20〜30)mg/h,PMMA群が14(8〜20)mg/hであった(p<0.01)。ACTはAN69ST群が176(147〜198)sec,PMMA群が241(204〜326)secであった(p<0.01)。しかし,FLTはAN69ST群が16.4(6.5〜43.5)時間,PMMA群が27.7(14.5〜35.8)時間で,2群間で差を認めなかった(p=0.69)。24時間以内の回路内凝固の発生率はAN69ST群16回路(61.5%),PMMA群は10回路(52.6%)で2群間に差は認めなかった(p=0.55)。【結語】FLTにおいて,今回の検討ではAN69ST群とPMMA群のFLTに差は認められなかった。

症例報告
  • 斉藤 佑治, 竹内 正幸, 津田 雅庸, 尾崎 将之, 寺島 嗣明, 田邊 すばる, 大石 大, 久下 祐史, 渡邉 栄三, 大西 正文
    2024 年15 巻1 号 p. 54-58
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    緩徐低効率濾過透析(sustained low efficiency dialysis with filtration:SLED-f)実施中の薬物動態に関する情報は極めて少なく,バンコマイシン(VCM)の投与量基準も定められていない。今回,SLED-f前後でのVCM血中濃度測定を行い,VCMクリアランスを求めた1症例について報告する。本症例は,末期腎不全にて維持透析を行っている患者で,呼吸苦と顔面全体の腫脹が出現したため当院へ救急搬送された。肺水腫を認め,さらに,左眼窩蜂窩織炎に伴う敗血症の診断にて,SLED-fの導入とVCM投与が開始となった。初回投与としてVCM 2g(28mg/kg)が投与され,投与終了30分後にSLED-fが実施された。SLED-fのヘモフィルター膜素材はpolymethyl methacrylate(1.8m2)を使用し,血液流量200mL/min,透析液流量2L/h,濾過流量2.9L/h,補液流量2.5L/hの設定で,透析時間は6時間であった。SLED-f開始直前,SLED-f終了1時間後のVCM血中濃度は,それぞれ63.3μg/mL,22.0μg/mLであった。得られたVCM濃度より算出したVCMクリアランスは5.56L/hとなり,腎機能正常時と同等となった。

  • 國吉 麗那, 山中 光昭, 三木 隆弘
    2024 年15 巻1 号 p. 59-62
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    Acute infectious purpura fulminans(AIPF)はさまざまな感染症により発症する死亡率の高い疾患で,急速に病態が進行するため早期から全身管理を中心とした治療介入が必要である。本邦でも報告の少ない,toxic shock syndrome(TSS)を契機にAIPFを発症したが血液浄化療法を含む集学的治療により良好な転帰を得られた症例を経験した。患者は40歳台,女性で,発熱・下腹部痛を主訴に近医を受診し,尿路性器感染症に伴う敗血症性ショックと診断され,集中治療管理目的に当院へ搬送となった。問診および各種検査・身体所見から月経関連TSSを疑い各種治療を開始した。入院時より全身性に紫斑を認めたことからAIPFを想起しpolymyxin B immobilized fiber column direct hemoperfusion(PMX-DHP)およびcytokine adsorbing hemofilter(CAH)を用いたcontinuous blood purification therapy(CBP)を施行した。PMX-DHP施行後よりショックからの離脱を認めた。TSSもAIPFの要因となることを考慮し,持続的かつ速やかな血液浄化療法による炎症制御は治療選択肢の一つとして有用であると考える。

技術・工夫
  • 菅谷 紗里, 林 悠紀子, 松原 拓也, 堤 晴彦, 杉山 弘樹, 藤田 雅規, 上野 良之
    2024 年15 巻1 号 p. 63-67
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    ヘモフィール®SNV(以下,SNV)は,持続的腎機能代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT)に使用される血液濾過器であり,高透水性ポリスルホン膜に生体適合性向上を目的として親水性ポリマー(NVポリマー)を適用している。本報告では,SNVの特徴を従来製品と比較したところ,SNVの中空糸膜表面へのタンパク質・血小板付着量の低下と長時間の溶質除去・透水性能の維持性能向上が示された。そのため,SNVは,CRRT治療効率の向上や計画治療時間達成率・フィルターライフタイム延長への貢献が期待できる。

  • 柴原 宏, 花澤 勇一郎, 風呂 正輝, 窪田 彬, 渋谷 陽平, 鈴木 俊郎, 柴原 奈美
    2024 年15 巻1 号 p. 68-73
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    急性血液浄化療法を施行する際,緊急時バスキュラーアクセスとして外頸静脈を使用することはまれである。外頸静脈は表在血管であり,走行を目視で確認可能で,穿刺手技は容易であるため,外頸静脈への直接穿刺時は迅速なバスキュラーアクセスとなり得る。外頸静脈から透析用カテーテル留置の際は,右外頸静脈を選択する。非カフ型カテーテルの場合は右外頸静脈より1〜2cm離して穿刺し,カフ型カテーテルの場合はやや鎖骨側を同様に穿刺する。カフ型カテーテルでは穿刺部位を1cm程度広く切開し,十分剝離することでその後のダイレーション,カテーテル留置がスムースである。いずれも体位の工夫でガイドワイヤーの迷入はなく,カフ型カテーテルでは出口部を前胸部に設置するため,感染率は低い可能性がある。外頸静脈は比較的簡単な手技で安全に確保可能であり,緊急時バスキュラーアクセスの新たな選択肢として有用であると考えられた。

  • 柳澤 佑哉, 三木 隆弘, 山中 光昭, 國吉 麗那, 富樫 俊文
    2024 年15 巻1 号 p. 74-77
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    近年集中治療領域におけるpost intensive care syndrome(PICS)予防が注目されておりその方策の一部として早期離床の重要性が示されている。ICUにおいて急性血液浄化療法が必要となる重症患者では循環動態の不安定さから持続的血液浄化療法(continuous blood purification:CBP)が選択されることも少なくないが,CBP施行患者ではリハビリテーションの実施率が低いと報告されている。当院でもその必要性が認識される一方で,リスク管理上CBP施行中の離床は避けられてきた。しかし理学療法士を専従化したことで,毎日の多職種カンファレンスへの参加,他職種とのスケジュール調整,目標設定や問題点の共有などを行い,多職種で介入することによって十分なリスク管理のもと積極的なリハビテーションの実施が可能となったため,その取り組みについて報告する。

  • 藤田医科大学病院ICUにおける薬剤師のかかわり
    竹本 雄一, 戸田 健太郎, 鈴木 彩貴, 森山 和広, 西田 修
    2024 年15 巻1 号 p. 78-82
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    集中治療室(ICU)における診療は最重症の患者に対し多職種が専門性をもって集学的に行われる。ICUに従事する薬剤師は薬学の専門家としての知識を最大限に活かすことで,ICUにおける薬物治療の質の向上に寄与しなければならない。ICUにおいて血液浄化療法は敗血症を含めた重症病態において頻繁に行われるが治療に必要な薬物も除去されてしまうため,薬物の除去を考慮した投与計画を立てる必要がある。薬物動態に関する知識と血液浄化療法の原理や薬物クリアランスを十分に理解することで,血液浄化療法中の薬物治療をより効果的なものにすることができる。血液浄化療法による影響を加味した投与計画を実際の臨床に反映していくために医師,看護師,臨床工学技士など多職種と連携していくことが血液浄化療法施行中の薬物投与の質を向上させていくものと考える。

  • 片岡 怜, 芝田 正道, 大橋 牧人, 川田 容子, 髙野 太輔, 井手 健太郎, 松本 正太朗, 糟谷 周吾
    2024 年15 巻1 号 p. 83-87
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2024/12/01
    ジャーナル フリー

    小児など,持続的血液浄化療法(continuous blood purification therapy:CBP)のルート確保が困難の場合,体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)回路にCBPのバスキュラーアクセスを接続する場合があるが,ECMO回路内への空気混入や出血のリスクがあり,トラブルを考慮した安全対策を行う必要がある。その接続方法はさまざまであるが,当院ではECMO脱血部位にCBP返血,ECMO送血部位からCBP脱血を行っている。このとき,ECMO脱血が強い陰圧であると,CBPの返血圧が陰圧となるため,CBPの返血部位に抵抗を追加して対応している。本実施法について検証した結果,ECMO脱血の陰圧の影響を受けずに,問題なくCBPを施行できることを確認した。

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