日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
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症例報告
敗血症に対する緩徐低効率濾過透析(SLED-f)施行中のバンコマイシンクリアランスを求めた一症例
斉藤 佑治竹内 正幸津田 雅庸尾崎 将之寺島 嗣明田邊 すばる大石 大久下 祐史渡邉 栄三大西 正文
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2024 年 15 巻 1 号 p. 54-58

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抄録

緩徐低効率濾過透析(sustained low efficiency dialysis with filtration:SLED-f)実施中の薬物動態に関する情報は極めて少なく,バンコマイシン(VCM)の投与量基準も定められていない。今回,SLED-f前後でのVCM血中濃度測定を行い,VCMクリアランスを求めた1症例について報告する。本症例は,末期腎不全にて維持透析を行っている患者で,呼吸苦と顔面全体の腫脹が出現したため当院へ救急搬送された。肺水腫を認め,さらに,左眼窩蜂窩織炎に伴う敗血症の診断にて,SLED-fの導入とVCM投与が開始となった。初回投与としてVCM 2g(28mg/kg)が投与され,投与終了30分後にSLED-fが実施された。SLED-fのヘモフィルター膜素材はpolymethyl methacrylate(1.8m2)を使用し,血液流量200mL/min,透析液流量2L/h,濾過流量2.9L/h,補液流量2.5L/hの設定で,透析時間は6時間であった。SLED-f開始直前,SLED-f終了1時間後のVCM血中濃度は,それぞれ63.3μg/mL,22.0μg/mLであった。得られたVCM濃度より算出したVCMクリアランスは5.56L/hとなり,腎機能正常時と同等となった。

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© 2024, 特定非営利活動法人 日本急性血液浄化学会
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