2011 年 2 巻 1 号 p. 25-30
急性期医療には,慢性期医療とは異なった種々の特徴が伴っている。急性期医療において,医療者はあらゆる面で速やかな決断を求められ,多くの場合限られた装備と人材で即時的医療行為に当たらなければならない。このため,現代医療の根幹である「説明と同意」という基本的な過程が,緊急事態では必ずしも望ましい形式で行いがたい。この点は“emergency rule”として容認され得るのではあるが,これに甘えずできうる限り時を置かずに患者側に事態を説明し,施行しようとする医療の内容に触れることが肝要である。殊に先進的な医療が選択される場合には,これに意を尽くす必要が出てくる。患者のQOLを患者側と熟考したうえで,治療の非開始や一旦開始した治療の中止(断念)を模索しなければならない事態も生ずる。ここでは,「生命の捉え方」が医療者に問われる。