日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
原著
急性腎障害に対する酢酸フリー透析液の効果
阿部 雅紀岡田 一義丸山 範晃伊藤 緑奈倉 千苗美松本 史郎相馬 正義
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2011 年 2 巻 1 号 p. 81-86

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抄録

目的:これまで,AKIに対する腎代替療法(renal replacement therapy:RRT)で使用されてきた透析液や置換液の中には少量の酢酸が含まれていた。酢酸はサイトカイン産生を亢進し,慢性炎症を惹起するだけでなく,血管拡張作用により循環動態へ悪影響を及ぼすことで懸念されていた。そこで,AKI治療における無酢酸(酢酸フリー)透析液と従来の酢酸含有透析液との臨床効果を比較検討した。方法:対象は2008年5月から2010年7月までに当院入院となり,AKIのためRRTを施行された40例(男性27例,女性13例,平均年齢67.5歳)。酢酸フリー群(Acetate-free group:AF群)20例と酢酸含有群(Acetate-contained group:AC群)20例の2群に分けて比較検討した。治療時間は患者個々の病態に応じ2~6時間とし,透析液流量500mL/minで行った。結果:患者背景で,APACHEⅡスコア,SOFAスコア,慢性腎臓病の併存率等に2群間で有意差は認めなかった。腎機能回復までの期間,入院日数はAF群で有意に短期間であった(p<0.05)。1例あたりの平均治療回数もAF群で有意に低値であった。処置の必要な低血圧の頻度もAF群で有意に低頻度であった。pH,HCO3-濃度は観察期間中,AF群で有意な高値を示した。結論:無酢酸透析液を用いたRRTは酢酸含有透析液のそれに比し,AKI患者の腎機能回復率の改善効果があることが示唆された。

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© 2011, 特定非営利活動法人 日本急性血液浄化学会
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