日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
精神科臨床から脳科学へ
入谷 修司羽渕 知可子池田 研二
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2010 年 21 巻 2 号 p. 113-119

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抄録
W.Griesinger(1817-1868)が「精神病は脳病である」“ Geisteskrankheiten sind Gehirnkrankheiten”という有名なテーゼを 150 年以上も前に残し,ドイツを中心に,精神医学は神経学と呼応しながら「精神神経学」として主に脳病理学から病態解明アプローチがなされた。それはひとつにはクレペリン(E. Kraepeline, 1856-1926)やアルツハイマー(A. Alzheimer, 1864-1915)などの業績へと結実した。患者観察から得られる臨床症状と,脳病理を中心とした脳機能とを結びつける臨床神経病理学を中心とした病態解明への努力は,精神疾患の責任病巣や臨床症状の成因に関する大きな手がかりをもたらした。近年の神経画像の技術進歩による脳形態情報や分子生物学的アプローチによって得られた疾患リスク遺伝子の情報などは,いまや「脳」という臓器を共通項として,神経病理学的な知見と収斂する時期を迎えていると考えられる。
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© 2010 日本生物学的精神医学会
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