日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
21 巻 , 2 号
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  • 岡田 俊
    2010 年 21 巻 2 号 p. 61-67
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    広汎性発達障害は,対人関係とコミュニケーションの障害,関心と活動の限局によって定義される症候群であり,複数の下位診断に分類される。しかしながら,これらは連続体(スペクトラム)を形成すると考えられるほか,診断そのものも軽症群に拡大しており,診断概念の妥当性を明らかにするためにも,神経生物学に基づく客観的診断手法の確立が求められる。本稿では,広汎性発達障害の基本障害をめぐる仮説のうち,共同注意の障害に焦点を当て,そこから明らかになる広汎性発達障害の神経基盤について述べた。その結果,扁桃体-辺縁系が重要な役割を果たし,その障害の程度が広汎性発達障害の重症度,ひいては,下位診断と関連していることが示唆された。
  • 橋本 亮太, 安田 由華, 大井 一高, 福本 素由己, 山森 英長, 武田 雅俊
    2010 年 21 巻 2 号 p. 69-75
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    自閉性障害やアスペルガー障害などの広汎性発達障害は,対人的相互作用の質的な障害,コミ ュニケーションの質的な障害,限定された反復的で常同的な行動・興味・活動などによって特徴づけられるものである。広汎性発達障害は,遺伝因子と環境因子との相互作用が重要な役割を果たしている多因子疾患と考えられている。しかし,広汎性発達障害の一卵性双生児における一致率は,60-90 %といわれており,統合失調症の約 50 %と比較して遺伝因子が強く,その遺伝率は,90 %とされている。遺伝因子の研究では,自閉症スペクトラム障害関連症候群,連鎖解析,関連解析,染色体異常と CNV(コピー数変異)解析,遺伝子発現解析,中間表現型解析がなされており,これらの解析技術の進歩が著しい。 その結果,2003 年にX染色体上にある Neuroligin3 と Neuroligin4 遺伝子が自閉症の原因遺伝子として報告され,続いて 2006 年に 22 番染色体上の SHANK3 遺伝子が報告された。さらに,新たにできたDNA の変異のうち CNV(copy number variant)と呼ばれるゲノムの一部の領域の欠失や重複が,孤発性の自閉症では多いことが報告された。2008 年には,この CNV の全ゲノムサーチにより,2 番染色体の Neurexin 遺伝子が関連することが見出され,興味深いことに,Neuroligin と相互作用することから注目を浴びている。これらの遺伝子群は,すべてシナプスにて機能する分子であり,広汎性発達障害では,シナプス機能の障害があることが示唆される。本稿では,広汎性発達障害の遺伝子研究の歴史と最新の知見に加えて,今後の方向性について概説したい。
  • 根來 秀樹, 飯田 順三, 澤田 将幸, 太田 豊作, 岸本 年史
    2010 年 21 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    発達障害には生物学的背景の存在を示唆する報告が多い。本稿ではそれら報告のうち精神生理学的研究として,頭皮上脳波,聴性脳幹反応,事象関連電位の現在までの知見を概説した。それらの中には客観的指標となる可能性がある知見もあるが,今までの研究の結果には精神遅滞の影響が含まれていた可能性がある。また事象関連電位の研究では発達障害の特徴に応じた課題の工夫などが必要である。
  • 猪股 誠司, 松本 英夫
    2010 年 21 巻 2 号 p. 83-89
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    自閉症を対象とした脳の形態学的画像研究と機能的画像研究について概説した。脳の形態・容量に関しては,小脳や大脳の形態学的な異常に加えて,大脳容積の増加と発達早期における脳の過形成(hyperplasia),また脳内ネットワークの異常について紹介した。脳機能に関する所見については,“心の理論(theory of mind)”,“表情認知タスク”,“感情処理タスク”を基にした研究結果を紹介しながら,彼らの認知の障害と脳内の機能障害の領域などとの関係について述べた。脳の機能的ネットワ ークの減少は自閉症者の共通な特徴であることが証明されつつあり,さらなる機能の解明が期待されている点について述べた。
  • 十一 元三
    2010 年 21 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    広汎性発達障害(PDD)に関する認知科学的・精神生理学的研究について展望した。精神生理学的研究に関しては,覚醒や注意について事象関連電位や自律神経活動の指標を用いて PDD 群に何らかの所見を見出した報告が多い。対人的注意については行動学的検査をもとに共同注意の低下を示す所見が得られている。脳機能画像を用いた研究からは,顔・表情や感情などの対人的処理と関連する領域を中心に所見が得られている。例えば,表情に対する扁桃体の低活動,顔に対する紡錘状回や上側頭回の賦活減少などが報告されている。さらに,対人的刺激に対し,ミラーニューロンにあたる下前頭回弁蓋部や眼窩部前頭前野の賦活減少もしばしば見出されている。聴覚刺激を用いた研究でも,主に対人的刺激に対する非定型的反応が報告されている。以上のように,PDD に関して非高次機能および対人的認知機能を中心に所見が集まりつつあると言える。
  • 菱本 明豊, 石黒 浩毅
    2010 年 21 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    最新の分子遺伝学的研究手法,特にゲノムワイド SNP アレイ(genome-wide human SNP array),アレイ CGH(comparative genomic hybridization),ハイスループットシークエンスなどの手法によって神経シナプスを構築する分子,神経細胞接着因子(neural cell adhesion molecule)の遺伝子変異が様々な精神疾患の病態生理に関わっていることがわかってきた。なかでもニューレキシン(NRXN)・ニューロリギン(NLGN)遺伝子は自閉症,統合失調症,薬物依存症の感受性遺伝子として同定されてきている。また薬物依存には NrCAM 遺伝子がかかわっていることがわかってきた。この項では最近の精神疾患における神経細胞接着因子研究と我々の研究を紹介する。
  • 國井 泰人, 池本 桂子, 和田 明, 楊 巧会, 志賀 哲也, 松本 純弥, 丹羽 真一
    2010 年 21 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    我々は,精神疾患死後脳集積システムの構築とそれに並行した精神疾患の啓発活動を 1997 年より行ってきた。本稿では,福島精神疾患死後脳バンクのシステム及び,発足して以来現在までの歩みと実績を紹介するとともに,財政的問題や専属スタッフの不足,臨床医と基礎医学研究者との連携の必要性,全国規模でのバンクネットワークの必要性など,バンクの運営に従事する中で直面している課題について報告する。
  • 入谷 修司, 羽渕 知可子, 池田 研二
    2010 年 21 巻 2 号 p. 113-119
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    W.Griesinger(1817-1868)が「精神病は脳病である」“ Geisteskrankheiten sind Gehirnkrankheiten”という有名なテーゼを 150 年以上も前に残し,ドイツを中心に,精神医学は神経学と呼応しながら「精神神経学」として主に脳病理学から病態解明アプローチがなされた。それはひとつにはクレペリン(E. Kraepeline, 1856-1926)やアルツハイマー(A. Alzheimer, 1864-1915)などの業績へと結実した。患者観察から得られる臨床症状と,脳病理を中心とした脳機能とを結びつける臨床神経病理学を中心とした病態解明への努力は,精神疾患の責任病巣や臨床症状の成因に関する大きな手がかりをもたらした。近年の神経画像の技術進歩による脳形態情報や分子生物学的アプローチによって得られた疾患リスク遺伝子の情報などは,いまや「脳」という臓器を共通項として,神経病理学的な知見と収斂する時期を迎えていると考えられる。
  • 辰井 聡子
    2010 年 21 巻 2 号 p. 121-125
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    法的・倫理的課題をクリアしてブレインバンクを実現する最良の方法は,研究者自身が自主的に倫理指針を作り上げることである。科学研究における法的・倫理的課題は,①研究参加者等の権利・利益を侵害しないこと,②参加者・一般社会との信頼関係を保つことの 2 点にほぼ尽きる。これらはいずれも研究を遂行する者自身の課題であり,研究者が積極的に取り組むことで初めて信頼が確保される。本稿では,とくに①のための基礎として,死体由来試料の法的地位,研究利用の要件について法学の立場から検討を加える。
  • 福井 裕輝
    2010 年 21 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 十一 元三
    2010 年 21 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    はじめに,従来の精神疾患とは異なる広汎性発達障害のユニークな臨床特性について,対人相互的反応の障害,強迫的傾向,およびパニックへの陥りやすさに焦点を当てて要約し,下位診断および併存障害の問題について整理した。続いて,現在の責任能力についての一般的考え方と,責任能力の判断に影響を及ぼすと考えられてきた精神医学的要因について振返り,それらの要因に広汎性発達障害の基本障害が含まれていないことを確認した。次に,広汎性発達障害の司法事例にみられた特異な特徴の幾つかが,自由意思を阻害すると判断される従来の精神医学的要因に当てはまらないものの,実際には自由意思の指標とされる他行為選択性を制約していると判断する方が妥当であると思われることを論じた。最後に,責任能力上の特徴と,広汎性発達障害について現在までに知られた神経基盤との関連について推測した。
  • 吉川 和男
    2010 年 21 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    今から 1 世紀前に規定されたわが国の刑法 39 条には,「心神喪失者の行為は罰しない,心神耗弱者の行為はその刑を減刑する」との規定があり,精神障害者による犯罪行為については,刑罰を負わせず,刑を免除して,医療につなげる人道的配慮がなされている。また,1931 年に,大審院で下された判決が,わが国の責任能力判定の根拠として今日でも用いられている。一方,最近の脳機能画像検査や神経心理学的検査の進歩により,人の前頭葉の機能に関して比較的容易に豊富な情報が得られるようになった。これらの検査手法は未だ発展途上にあるとは言え,責任能力判定に求められる,被疑者や被告人の精神状態,弁識能力,制御能力に関しても,無視することのできない有力な情報を提供してくれる。このような発展をみる現代の精神医学にあって,責任能力判定だけが旧態然としたやり方に留まっていなければならない理由はないと思われる。本稿では 2 つの事例を用いて考察する。
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