抄録
ミクログリアは,貪食やT細胞への抗原提示を行い,神経免疫に寄与している。また,神経発達時に余剰のニューロンやシナプスの除去に関与し,脳組織の恒常性を保つと考えられている。成熟してからも認知機能に関与する。アルツハイマー病においては,プラークや異常タウタンパクを除去すると同時に正常ニューロンやシナプスに傷害を及ぼすことにより,認知機能低下を導いている可能性が示唆されており,特に前シナプス部位の異常が報告されている。いくつかの前シナプスタンパクは認知症患者において,減少がみられる。抑制性神経に分布するcomplexin‐1の減少は,初期の認知症の認知機能低下と関連し,興奮性神経に分布するcomplexin‐2の減少は認知症の進行時の認知機能と相関することが示されている。現在,筆者らは認知症の海馬組織を用いてミクログリアとcomplexinやその他の前シナプスタンパクの評価を行っている。