日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
認知と炎症に着目したPTSDの遺伝学的検討
堀 弘明金 吉晴
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 33 巻 1 号 p. 10-15

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抄録
心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder:PTSD)の中核的特徴は,トラウマ記憶の再体験症状に代表される記憶・認知の症状である。PTSDの生物学的異常については,炎症が近年注目されている。日本人を対象とした筆者らの検討でも,PTSD患者は認知の問題や炎症の亢進を呈することが見いだされた。一方,本疾患の発症には遺伝要因が関与することが双生児研究などによって示されており,また,認知と炎症にも遺伝要因が存在する。これらから,PTSDの脆弱性に関与する遺伝要因は,中間表現型としての認知や炎症に影響し,それによって本疾患の発症リスクを高めるという機序が想定される。しかし,そのような可能性を検討した研究は乏しい。  筆者らは,PTSDの病因解明をめざし,患者および健常対照者を対象に,心理臨床評価,認知実験,炎症系分子などの血中濃度測定,末梢血DNA・RNA解析を包含した研究プロジェクトを実施している。本稿では,PTSD患者における認知と炎症およびそれらの遺伝要因を検討した最新の研究について,筆者らの研究成果を中心に紹介し,それに基づいて本疾患の病因・病態を考察する。
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© 2022 日本生物学的精神医学会
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