日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
ミクログリアを介したノルアドレナリンによる前頭葉スパインの可塑性調節
柳下 祥
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2025 年 36 巻 2 号 p. 71-74

詳細
抄録
シナプス可塑性は脳が情報を長期保持するために重要な機序である。特に新皮質や海馬,線条体の興奮性シナプス後部には樹状突起スパインとよばれる構造がある。この構造的長期増強(sLTP)がシナプス可塑性の主要な細胞機序であり,海馬や線条体でよく調べられてきた。新皮質は知覚や運動,情動にかかわる脳の中心的な部位であるが,sLTPの制御機序については不明な点が多かった。特に新皮質では成熟に伴いシナプス可塑性が低下する一方,成熟後もスパインの形態可塑性が観察されており,一見矛盾するこの制御実態は不明である。最近の筆者らの研究では,若年期ではsLTPが高いがこれが成獣期にかけて抑制されることを見出した。この抑制はミクログリアがTNF‐αを介して制御していた。一方,成獣期であってもノルアドレナリン(NA)がミクログリアのβ2アドレナリン受容体を介してこの抑制を解除し,sLTPを促進していた。また,この機序は観察恐怖学習(OFL)における記憶形成にも関与していた。これらの結果から,ミクログリアとノルアドレナリンによる拮抗した制御が発達過程で出現し,成獣期の新皮質のシナプス可塑性を調節することを新たに見出した。
著者関連情報
© 2025 日本生物学的精神医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top