AI・データサイエンス論文集
Online ISSN : 2435-9262
富士川周辺地域における素因と誘因を考慮した土砂災害危険度現況推定手法の構築
平野 英孝相馬 一義宮本 崇石平 博馬籠 純黒田 晴倉上 健
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2022 年 3 巻 J2 号 p. 339-345

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抄録

近年,日本では豪雨や台風による土砂災害が頻発している.特に,富士川流域では土砂災害が発生しやすい地域が多く存在する.土砂災害の減災のためには,素因と誘因を考慮した土砂災害危険度現況推定手法を開発する必要がある.本研究では富士川周辺地域を対象に,クラスター分類と深層学習を用いて素因と誘因を直接的に考慮した土砂災害危険度現況推定手法を構築し,検証を行った.深層学習手法としては,全結合型の深層ニューラルネットワークを用いた.3次メッシュで,各セルごとに誘因として60分間積算 雨量と土壌雨量指数を使用した.素因としては各セルごとの最大傾斜角度と断層の有無を用いた.学習デ ータ,検証・閾値の決定,推定実験と定量的評価には2007年9月6日,2011年9月21日,2019年10月12日の台風による誘因データと土砂災害発生報告を使用した.推定実験では,ニューラルネットワークの出力値から閾値を決定して土砂災害危険度を推定し,土砂災害発生報告書と比較することで評価を行った.評価にあたって,同一行政区域内に「危険度の高い」セルがあり,「災害発生報告あり」のセルがあれば「的中」とした.さらに,評価のために混同行列に基づいて精度指標を算出した.本手法では,見逃しなく推定され,土砂災害危険度現況推定が適切であることが示された.しかし,空振り率が0.906と高く,今後の研究でさらなる改善が必要である.

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© 2022 公益社団法人 土木学会
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