2023 年 4 巻 3 号 p. 553-560
降雨流出氾濫モデルによるアンサンブル計算には,計算コストの高さがボトルネックとなりうる.そこでモデル出力の浸水深の時系列を高速で模倣可能な,深層学習モデルによるエミュレータを開発した.このエミュレータは降水量の時空間分布を入力することで,同期間の浸水深の時空間分布を出力する.出力はイベント×時間×空間の3次元を持ち,データサイズが大きい.そこで学習の前処理に特異値分解による次元削減を行うことで,汎化性能の高い学習器の開発を試みた.次元削減では,3次元データを行列形式へ変形する必要があり,2通りの手法を試す.その結果,出力のサイズをより小さくする行列への変形・次元削減手法が有効であり,同じ入力から最大浸水深のみを出力するエミュレータと同等の精度を持つエミュレータの構築が可能であると示された.