2023 年 4 巻 3 号 p. 70-82
本研究では,炭素繊維シート補強を有する塩害を受けたPC-T桁の耐力を推定する代理モデルを構築した.まず,炭素繊維シートと内部PC鋼材の損傷状態を変化させた大量のモデルを作成し,非線形FEM解析により桁の耐力を含むデータセットを準備した.続いて,内部PC鋼材の損傷状態を量的にのみ学習したLightGBMによるベースラインモデル及び損傷状態を面的に数値画像として学習したCNN+MLPの2つの代理モデルを作成した.対象PC桁の耐力は,内部PC鋼材の面的な損傷分布等により定まる桁の構造的な弱部に大きく依存するため,この情報を取り込んだCNN+MLPでは耐力の予測精度が向上した.多様な鋼材損傷状態・複合材料補強を有する塩害橋梁の構造評価を代理モデルにより簡便に実施する考え方を示し,力学指標に基づく大量の構造物に対する効率的な維持管理の実現可能性を述べた.