2023 年 2 巻 1 号 p. 158-168
本研究では曲げ剛性の低減から損傷の同定を行うことを想定し,楢梁桁に関する曲げ剛性の補正係数をたわみ影響線を用いて推定する手法について数値解析に基づく検討を行った.ベイズ推論(MAP推定)の考え方から2種類の目的関数を示し,局所的に損傷が生じるシナリオと全体的に損傷が生じるシナリオについて曲げ剛性の補正係数の推定を行った.局所的損傷には未知量である補正係数そのものに事前情報を与える目的関数が,全体的捐傷には未知量の差分に対して事前情報を与える目的関数が好ましい結果となった.Hessian行列を用いた推定値の不確定性の大きさや未知量間の相関係数の評価を行い,推定精度についても定量的に示した.ホワイトノイズを観測量誤差として考慮した場合,複数回の計測結果から推定を行うことで捐傷領域の推定が可能との結果となった.