抄録
河川工事などの社会資本整備分野では,コンクリートなど多くの資材を使用し,またその運搬距離も長くなる.昨今の環境問題に対する国民意識の高まりから,社会資本整備による環境負荷量を算定し,その低減に向けた取り組みが重要となってきている.社会資本整備分野では広域的・長期的な環境負荷として二酸化炭素(CO2)の排出や廃棄物の発生に留意が必要であるが,これら環境負荷量については実際の事業の実施状況を踏まえて定量的に評価し,その低減方策の検討が必要である.本稿は実際の河川工事を対象として,まずは設計段階において複数の代替案に係るコスト及びCO2排出量等を算定するとともに,LIME2の統合化指標を用いた比較検討を行い,環境負荷低減効果の分析を行った.また施工段階について環境負荷低減に関するシナリオ設定を行い,資材を新たに採取・製造する標準案(ベースラインシナリオ)に対する環境負荷低減効果の分析を行った.さらに本検討を踏まえ,全国の河川管理者や建設コンサルタント・施工会社が参照できるような環境負荷低減を意図した河道設計・施工の検討手順を構築した.