抄録
インドネシアでは,国内温室効果ガス(GHG)排出量の約67%が農業・森林・土地利用変化(AFOLU)に由来している.排出削減効果の定量的な評価および高い削減効果をもつ対策の特定は重要である.我々は,AFOLU排出削減評価モデル(AFOLUB)を開発したが,これを用いAFOLU部門におけるGHG排出緩和のための具体策を提示した.GHG排出量を推計した結果,2030年において対策を実施しない場合AFOLU部門に由来する排出量は2000年比2.5倍の1.7GtCO2eqになることが示された.その75%は泥炭地の排水・酸化による.また,2030年,GHG排出削減のための追加的許容費用10USD/tCO2eq下において農畜産業部門では2000年排出量比45%に相当する33MtCO2eq/年の削減が見込まれ,うち11MtCO2eq/年は水田での水管理および農閑期の稲わらのすき込みによる効果であった.一方,森林・土地利用変化部門については10億USD(2005~2050年)の資金制約下において,長期的な視点での対策策定を行えば,自然回復の強化,再植林,森林伐採の減少により,2050年まで平均して約829MtCO2eq/年の削減効果が示された.これは2000年時点のLULUCF部門の排出量の1.2倍,エネルギー部門の排出量の約2.6倍に相当する.