2021 年 77 巻 5 号 p. I_285-I_292
2015年に採択されたパリ協定では世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち,1.5℃に抑える努力をすることが合意され,21世紀後半には,温室効果ガス排出量と森林などによる吸収量のバランスをとる長期目標が掲げられた.京都市では 2050年までに温室効果ガスの排出を正味ゼロにする脱炭素社会の実現を目指すことを表明している.本研究では,京都市において2050年の二酸化炭素排出量が実質ゼロとなる姿を定量化した.その結果,京都市において二酸化炭素排出量を吸収量以下に抑えるには,省エネによりエネルギー需要を削減した上で,家庭,業務,旅客輸送,貨物輸送部門の残るエネルギー需要を全て再エネ由来のエネルギーで満たし,産業部門についても第一次産業で70%,第二次産業で30%のエネルギー需要を再エネ由来の電力で賄う必要があることが示された.