抄録
本研究は,新しく開発した建築用保水性コンクリート板を用いて,工場の大規模折板屋根を対象に,屋根面からの熱流入の軽減量と室内高温環境改善効果の実測と解析を行い,室内暑熱環境改善資材としての有効性を検証することを目的として実施した.2011年夏季の7~9月の実測結果から,折板表面温度の低減効果は保水板区で顕著に現れ,対照とした露出折板屋根区と比べて,夏季晴天日の日中平均値で21.8℃の温度差を生じた.保水板区と対照区の室内環境を比較した結果,天井面温度は平均12.6℃,室温は平均5.7℃保水板区の方が低く,前年まで見られたコンプレッサーの停止事故を防止することに成功した.冬季は日射遮蔽に伴って僅かに室温が低下したが,熱貫流率相当値から考えて,乾燥状態では保温効果を有することが示唆され,夏冬通じて一定の効果があることから実用化の可能性は高いと判断した.