2012 年 68 巻 6 号 p. II_207-II_216
環境質の価値計測では,改善便益が計測されることが多く,悪化便益が計測されることは少ない.そのため,観光客は,環境悪化の程度が理解できないため,環境質の悪化を防ぐための利用料金の支払いを拒否する場合がある.そのため,本研究の目的は,環境悪化便益を計測し,かつ,観光客が許容可能な利用料金を試算することである.推計には,北海道の12か所の湿地帯への旅行行動データが用いられた.結果として,76%の環境質の悪化が想定された場合,利用料金は,旅行費用の0.15%~23.80%程度となり,100%の環境質の減少を想定した場合,旅行費用の0.46%~143.41%程度の追加費用を支払う可能性があると試算された.