土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
68 巻, 6 号
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環境システム研究論文集 第40巻
  • 木下 朋大, 盛岡 通, 尾崎 平
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_1-II_8
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,都市のみどり回廊の分析評価指標を提案すると共に,それら評価手法を用いて緑・オープンスペース分野の政策的インプリケーションを見出すことである.第一に,空間分布・配置構造から地域の拠点となるみどりの回廊性を分析する為,みどりの近接性指数(GA)と連担性指数(GS)を,第二に,歩行空間に沿った生活動線上のみどりの回廊性を分析する為,歩行経路選好性指数(UWT)を提案した.神戸市住吉川周辺地域でのケーススタディを通して,(1)既存公園の比較的近く(誘致範囲の3倍以内)であれば小規模であっても公園を創出することでみどりの近接性が高まること,(2)ある公園を行動の起点とし,人々の移動ベクトルを外向きと仮定したとき,既存公園の誘致範囲(250m)毎に複数の公園を設置することで,みどりの連担性は大きく向上すること,(3)快適性や安全性とトレードオフ関係にあると考えられる最短性や安全性を損なわない経路を創出することが,街路整備を通してみどりの回廊を形成する上で留意する点であることを確認した.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 白岡 敏, 三原 和也
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_9-II_14
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     中村は川に魚がすめる条件として,流量の確保,水質の確保,餌の確保,天敵からの保護,産卵場の確保,回遊路の確保,避難場所の確保を挙げている.天敵からの捕食を避けるため,あるいは洪水時の高速流を避けるために魚がワンド等の一次水域に避難する際の特性については,幾分研究がなされている.しかし,遡上中に疲労が蓄積することで魚が休憩する際の特性については幾分研究がなされているものの,休憩場所の幾何学形状および流速の変化による影響についてはほとんど解明されていない.本研究では室内水路において側壁に千鳥状に遮蔽物を設置し,遮蔽物設置間隔および流速を系統的に変化させて魚の休憩特性に及ぼす影響について検討した.その結果,遮蔽物設置間隔および流速を増加させると,休憩時間が増加することや休憩回数が増加することなどを明らかにした.
  • 竹端 哲郎, 松井 孝典, 町村 尚, Robert N. SHAW
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_15-II_23
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     都市化の進展とともに都市の生物多様性の重要性が認知され,都市活動と生態系との関連性から都市計画を見直すことの必要性が指摘されている.そこで本研究は森林に関する生態系サービスへの依存度を生態系面積単位で評価するエコロジカル・フットプリントを基にしたフレームワーク(Ecosystem Service Use: ESU)を用いて,大阪府の市区町村レベルで都市活動の主な活動形態である民生業務部門活動の生態系サービス依存度を評価・分析した.その結果,対象とした9業種によってFESU(Forest Ecosystem Service Use)の合計値は大きく異なったが,ほぼ全ての業種で森林生態系のCO2吸収サービスへの依存度は高かった.また,市区町村別での生態系サービス依存度の分析では大阪市中央区と北区の2区の生態系サービス依存度が非常に大きい値を示した.各市区町村の民生業務部門の業種構成割合,民生業務部門の従業員数あたりのFESU,森林生態系サービスへの域外依存度を変数としてクラスタ分類を行ったところ,それぞれ特徴を持つ5つの地域に分類することが出来た.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 松田 孝一郎, 藏本 更織, 野口 翔平
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_25-II_31
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     河川にダムや堰等の構造物が設置されると,魚の遡上が困難になる.そのため,水位落差を分割あるいは滑らかに接続し,魚類の遡上および降下を可能にする魚道の設置が必要となる.和田は,プール水深を3通りに変化させてアユの遡上実験行い,水深の減少に伴い,遡上率が高くなることを解明した.しかしながら,流量変化の影響を考慮していない上に,遡上の原因についても言及していない.本研究では,プール水深及び流量を系統的に変化させ,アユの遡上実験を行なった.その結果,プール水深の減少に伴い遡上率が高くなるが,流量が少ない時および多い時に遡上が困難になることが判明した.また,魚が上流側方向を向いて定位している場合,遡上率が高くなることが判明した.
  • 津田 守正, 西田 修三, 入江 政安
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_33-II_40
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     渇水被害軽減を目的として,家庭における節水型機器の普及促進策等の施策を講じようとする場合,施策を講じない場合に対する変化を推計することが重要である.本研究では,節水型トイレの普及促進策を講じた場合を想定し,買い替え行動の変化によるトイレの節水効果を,香川県高松市を例に推計した.施策により,買い替えサイクルが施策未実施の場合の半分まで短縮された場合,20年後において,施策未実施の場合と比べてトイレの平均使用水量が約4.5リットル/人日減少する.施策未実施の場合,現状に対して平均使用水量が約26.1リットル/人日減少すると予測され,施策により減少量が2割程度大きくなると予測される.また,施策により上位機種が購入される比率が上昇した場合,減少量は0.9リットル/人日大きくなると予測される.
  • Mitsuteru IRIE, Kenichi KASHIWAGI, Kiyokazu UJIIE, Ines NSIRI, Sana BO ...
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_41-II_46
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     Sedimentation occupies the storage capacity of reservoirs and reduces the amount of available surface water resource. The countermeasure to the sedimentation is required especially in arid land where the land erosion is very severe due to low vegetation in the catchment area, and even fine particles are deposited because of the low water rotation of the reservoirs under the climatic condition of clear difference between rainy season and drought season. However, it has not been carried out because the conventional technologies against the sedimentation, such as dredging or bypass for sediment inflow, are quite costly.
     The authors proposed the exploitation idea which can valorize the sediment and will financially assist the cost of dredging or other countermeasures to the sedimentation. One of the exploitation ways is producing construction bricks. Sediment in Tunisian reservoirs is fine and sticky clay or silt, so there is a potential of the material for producing ceramics. In this study, the current situation of the production of the construction bricks in Tunisia was surveyed; price of raw material, a wholesale price, market price, processing cost and material flow. This information defines the market of construction bricks and the possibility of reservoir sediment for the production of construction bricks can be evaluated.
     Physical feasibility of the sediment for construction bricks was also investigated by the trial production of small pieces of slate and carrying out the flexure test with them. The slate samples made from the sediment gave almost same strength as the slate made from clay which is used in a brick factory in Tunisia.
  • 澤田 育則, 市木 敦之, 淺野 匡洋, 大久保 卓也, 國松 孝男, 村地 弘
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_47-II_58
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     守山川河川浄化施設は,琵琶湖水質対策保全行動計画の一環として建設され,琵琶湖の水質浄化を意図した運転を行っている.本報告では,守山川河川浄化施設を対象に,出水時および平水時における汚濁物の挙動特性と負荷量収支の把握を目的とし,水質モニタリング調査を行った.平水時の水質は,施設の前後で大きく変化しなかったが,出水時には,本施設の出水時一時貯留池にて流入水質がSSで平均72mg/L,5-6ringsPAHsで平均27ng/Lであったものが,流出水質ではそれぞれ平均11mg/L,5.5ng/Lとなり,水質浄化効果が認められた.また,年間での平水時・出水時を含めた本施設における除去負荷量を概算すると,施設全体における除去負荷量のうち出水時一時貯留池での除去はSSで74%,5-6ringsPAHsで63%と高い比率を占めた.
  • 上岡 瞳, 金谷 健
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_59-II_69
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     ホテルにおける食品リサイクルの実施実態を,食品リサイクルの実施ホテルへのアンケート等によって調査した.得られた主な知見は以下の通りである.1)食品リサイクルを実施しても,食品廃棄物処理コストは増加していないホテルが多い.2)食品リサイクル実施に際して,従業員への事前研修等が必要であり,かつ継続的に必要である,というホテルが多い.3)食品廃棄物の分別においては厨房の協力が不可欠なので,食品リサイクルの組織運営の中心に,調理長を入れるべきである.4)大都市のホテルと地方都市のホテルでは,リサイクル委託の有無の割合に,違いがある.5)食品リサイクルの方法は,飼料化より肥料化が多い.
  • 日笠 希美, 金谷 健
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_71-II_78
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     家庭ごみ有料化における手数料使途の実態や情報公開の詳細な全国的傾向について,有料化施行時期が近年(2005年~2009年)の市へのアンケート調査を行い,主に以下のことがわかった.1)手数料収入は,特別会計でなく一般会計に入るが,使途を「限定なし」の市の割合は25%であり,6年前の59%から,大幅に減少した.2)使途項目が,新規が3割程度あり,有料化の手数料で,新規に始められた事業が少なくない.なお継続であっても,事業費が増加している使途項目が約5割ある.3)手数料使途内容の決定過程の資料の情報公開,手数料使途実績の情報公開も,ともに約半数の市で実施されている.4)手数料使途の情報公開とごみ減量との間には,統計的に有意な関連が認められる.
  • Irwan Ridwan RAHIM, Hirofumi NAKAYAMA, Takayuki SHIMAOKA
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_79-II_88
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     This paper assessed the solid waste management (SWM) service cost estimate system for major Indonesian cities and develop standards for major SWM service costs, which consist of: collection, transfer and treatment, transportation, landfill management costs. This paper also presents the results of economic assessments that compare the options available for SWM in major Indonesian cities. The options compared are: collection and transport efficiency (CTE), communal waste treatment (CWT), and a centralized composting and recycling facility (CRF). An expenses-benefit calculation is used for the economic assessment. The results of our study show that composting at a centralized plant is the most economically feasible option under the current conditions prevailing in Indonesia.
  • 山本 司, 盛岡 通, 尾﨑 平, 北詰 恵一
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_89-II_98
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     本研究では,人口減少および低炭素社会への移行の中で,ごみ焼却施設を更新していくシナリオの構築に基づき,広域化とエネルギー回収を評価する手法を開発した.兵庫県を対象に2010年から2030年のコスト,CO2排出量,総発電量,リサイクル率,最終処分量を算定した.広域化シナリオは,Bauシナリオよりも収集コストは増大するものの,施設運営・管理にかかるコストを低減できるため,両シナリオには差がないことを明らかにした.また,発電の効果を売電収入およびグリーン電力としてCO2削減に計上すると,わずかに広域化シナリオの方が優位となった.総発電量に限って言えば,広域化シナリオでは,Bauシナリオの2倍近い発電量が得られ,地域エネルギー供給施設の拠点となり得ることが示唆された.
  • Xiao LUO, Yoshitsugu HAYASHI
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_99-II_107
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     In order to find out the potential causes that affect CO2 emission and their changes in freight transport sector, this paper examines the relationship between carbon dioxide emission and transportation activities in the sector. First, CO2 emission from the freight transport sector from 2001 to 2010 is calculated based on presented methods. Second, LMDI (logarithmic mean Divisia index) method is employed to analyze the influencing factors of CO2 emission in freight transport sector. As a result, we find: (1) from 2001 to 2010, CO2 emission of freight transport in Beijing increased by 69%, i.e., from 3.50 million tons to 5.91 million-tons, while that in Shanghai rose by 242%, i.e., from 4.23 million tons to 14.5 million tons; (2) based on the result obtained by using LMDI method, population effect, per capita GDP effect, energy source effect and mode shift effect have positive effects on CO2 emission in both cities; while the factors of transport intensity and the emission coefficient effect show negative impacts on CO2 emission; (3) the reason why the decrease in transport intensity appears is that transported products are becoming more and more valuable and more value added. Therefore, policy makers should make corresponding policies to encourage rail transport and shorter travel distance in the freight transport sector to reduce CO2 emission.
  • 氏原 岳人, 阿部 宏史, 柏村 友哉
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_109-II_116
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     地域の身近な足として,また環境負荷の低い(輸送量あたりのCO2排出量の少ない)移動手段として“バス交通”が期待されている.一方,バス利用者数は年々減少傾向にあり,存続のためには,自家用車利用からの転換が特に重要となる.そこで本研究では,自家用車利用からバス利用への潜在的な転換可能性や,その際のバスサービスの改善ニーズを,居住者のバス利用環境の視点から定量的に明らかにした.分析の結果,バス利用の有無やバス利用への転換可能性は,年齢層及び職業の有無等の個人属性や居住地周辺のバス整備状況が特に影響していることが確認できた.さらに,バス利用へ転換する場合に改善を求めるバスサービスは,40代以下の層は,運行システムなどで相対的に類似した改善ニーズを持つ一方,60代以上非勤め人の層は,乗車前後の負担に関連する特徴的な改善ニーズを有していた.
  • 安東 新吾, 曽根 真理, 井上 隆司
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_117-II_126
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     環境影響評価法の改正により住民の参加機会が増加することで,これまでよりも分かりやすい環境影響評価図書の作成が事業者に求められると想定される.本稿では,環境影響評価手続における住民意見を分析し,住民の関心に対応した環境影響評価図書のあり方を検討した.住民意見には,大気質と騒音において環境基準との比較だけでなく現況からの悪化の程度,動物・植物・生態系において重要な種だけでなく身近な自然環境の保全などがあることが判明した.環境影響評価図書の作成にあたっては,住民の関心に対応する部分を強調することが必要となる.ただし,情報量の増加が住民の負担とならないよう,住民の関心に応じた適切な対応が求められる.
  • 藤山 淳史, 松本 亨
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_127-II_138
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     望ましい地域循環圏を検討するためには,循環資源の品目特性,地域特性に応じた最適スケールを導出するための理論を構築する必要がある.本報告では,空間スケールが循環資源が発生する際の発生密度,収集運搬工程の輸送効率,中間処理施設のスケールファクターによって決まるものと想定し,これらを支配パラメータとした資源循環の最適空間規模導出モデルの構築を行い,感度分析とケーススタディを通して支配パラメータと空間スケールとの関係を把握した.構築したモデルにより,物質固有のパラメータと都市特性を表現するデータを当てはめることにより,空間スケールを導出することができるようになり,品目・地域特性を考慮した資源循環の最適空間規模の議論・検討を行うことが可能となった.
  • 高橋 麻由, 中山 裕文, 小宮 哲平, 島岡 隆行
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_139-II_146
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     廃棄物埋立地では,有機性廃棄物の嫌気性分解によって埋立ガスが発生しているが,廃棄物層や覆土層からの埋立ガス放出メカニズム,特に覆土層に生育する植物の影響に関しては解明されていない.そこで,本研究では,廃棄物埋立地における埋立ガス放出量に及ぼす植物の影響について明らかにするための実験およびモデル構築を行った.カラム実験では植物を介して放出されるCH4と土壌表面を介して放出されるCH4を区別して測定し,植物を介したCH4放出の比率を評価した.さらに,植物を介したCH4放出比率には植物種および土壌の土質特性が影響していることを明らかにした.また,屋外実験により,植物の生育条件の異なる模型槽 3つを用いてCH4フラックスを測定した結果,植物がある模型槽で植物が無い模型槽よりもCH4フラックスが大きくなるという結果を得た.さらに,植物からのCH4放出を再現するためのモデルを構築した.
  • 奥岡 桂次郎, 三宅 悠介, 大西 暁生, 韓 驥, 白川 博章, 谷川 寛樹
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_147-II_154
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     近年,循環型社会への移行に向けた取り組みが多く行われており,その一つに地域循環圏という概念がある.多大な物質フローを有する建設系廃棄物は,今後の発生量増加が予想されている.また,その発生には空間的な偏りが存在するため,地域循環圏を構築することで循環利用の効率化が可能と考えられる.ところが,既往研究は都道府県レベルでの分析が主として為されているため,より詳細な空間分布を考慮した将来推計が必要となる.そこで,本研究では,建設系廃棄物の49%を占めるコンクリート塊に着目して,その発生量と需要量を市町村ごとに推計するモデルを作成し,地域循環圏構築に向けた分析を行った.結果として,20km以内で循環させると仮定した場合,東海三県内で3つの圏域が見られた.
  • 生津 路子, 藤森 真一郎, 松岡 譲
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_155-II_164
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     本研究では中国を対象に,2050年に世界GHG半減目標と整合性を持つ削減は可能か,可能ならばどのような施策が必要かを,社会経済に関する二つの将来シナリオ
     SLCS: 変革を積極的に受容し高い経済成長率の社会
     SSTAG: 変革に消極的であり,比較的低い経済成長率の社会
    の下で検討した.検討にはCGEモデルを用い,中国の削減目標は世界半減と一人あたり排出量均等化の条件から求め,2050年に2005年比66%減とした.
     結果,目標達成は不可能ではないものの,実現する際の排出価格は,SLCSとSSTAGで$464/tCO2eq. 及び$395/tCO2eq. となり,GDP損失は7.9%及び8.3%となった.また,特に効果があった施策は,再生可能エネルギー導入と非エネルギー起源GHGの削減であった.
  • 青木 えり, 栗栖 聖, 花木 啓祐
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_165-II_176
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     地方自治体規模で市民の環境配慮行動が重視されているが,行動変容に有効な要因,要因間の関係等まだ明らかになっていない部分も多い.そこで,社会的な要因と個人的な要因の両面から現状を明らかにするため,環境配慮行動に影響を与えうる社会経済的指標を市町村レベルの統計値から調査・整理すると同時に,全国47都道府県を対象に,市民の環境配慮行動実施状況や意識,個人属性を調査する大規模アンケートを実施した.市民の環境配慮行動としては44の日常行動と13の機器導入を対象とし,各行動の実施度の違いや,促進・阻害要因の差異を分析した結果,行動により異なる要因が影響を及ぼすが,全体として個人属性や心理的な要因の方が社会的な要因より大きな影響を及ぼす環境配慮行動が多くみられた.また地方自治体の環境施策では,レジ袋や可燃ごみ有料化が関連行動に正の影響を与えていた.
  • 藤倉 まなみ, 古市 徹, 石井 一英
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_177-II_188
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     建設発生土の不適正処理が続いており,自治体が残土条例を制定する動きも継続している.本研究では,その課題の明確化と対策の提案を目的とした.収集した不適正処理事例からリスク,経済的動機,現行法の適用限界,パターンを整理し,ISM法による構造モデル化により不適正処理が排出側の構造と受入地側の構造によることを示した.また神奈川県の2010年度場外搬出データを分析し,公共工事の建設発生土は民間工事に比べ,移動距離と搬出先数が有意に小さく,通達の効果があること,市町村の残土条例は,建設発生土の搬入に対して抑止効果も増加効果も認められないことを示した.都道府県の条例を比較検討し,循環型社会形成推進基本法を根拠として排出者責任を具体化する立法が必要であることを示し,そのための具体的な規制内容等を提案した.
  • 尾沼 広基, 宮本 拓郎, 馬奈木 俊介
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_189-II_196
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     近年,産業界における環境負荷削減の取り組みとして,自主的アプローチが注目を集めるようになっている.本研究では,2001年から2003年に日本で実施された第2期自主管理計画を分析対象とし,自主管理計画におけるジクロロメタン排出量削減効果の実証分析を行った.分析結果より,変化量でみた場合には自主管理計画への参加事業所と非参加事業所との間に統計的に有意な差が見られた.これは,非参加事業所に比べ,排出規模の大きい事業所が計画に参加していたことが要因として考えられる.一方で,変化割合でみた場合には統計的に有意な差が見られなかった.これは,第2期実施期間以前から参加事業所が削減取り組みをおこなっており,実施期間における削減パフォーマンスが過小に評価されている可能性が示唆される.
  • 山田 宏之, 田中 明則, 小山 博之, 羽田 雄一
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_197-II_206
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     本研究は,新しく開発した建築用保水性コンクリート板を用いて,工場の大規模折板屋根を対象に,屋根面からの熱流入の軽減量と室内高温環境改善効果の実測と解析を行い,室内暑熱環境改善資材としての有効性を検証することを目的として実施した.2011年夏季の7~9月の実測結果から,折板表面温度の低減効果は保水板区で顕著に現れ,対照とした露出折板屋根区と比べて,夏季晴天日の日中平均値で21.8℃の温度差を生じた.保水板区と対照区の室内環境を比較した結果,天井面温度は平均12.6℃,室温は平均5.7℃保水板区の方が低く,前年まで見られたコンプレッサーの停止事故を防止することに成功した.冬季は日射遮蔽に伴って僅かに室温が低下したが,熱貫流率相当値から考えて,乾燥状態では保温効果を有することが示唆され,夏冬通じて一定の効果があることから実用化の可能性は高いと判断した.
  • 奥山 忠裕
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_207-II_216
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     環境質の価値計測では,改善便益が計測されることが多く,悪化便益が計測されることは少ない.そのため,観光客は,環境悪化の程度が理解できないため,環境質の悪化を防ぐための利用料金の支払いを拒否する場合がある.そのため,本研究の目的は,環境悪化便益を計測し,かつ,観光客が許容可能な利用料金を試算することである.推計には,北海道の12か所の湿地帯への旅行行動データが用いられた.結果として,76%の環境質の悪化が想定された場合,利用料金は,旅行費用の0.15%~23.80%程度となり,100%の環境質の減少を想定した場合,旅行費用の0.46%~143.41%程度の追加費用を支払う可能性があると試算された.
  • 坂本 直樹, 中嶌 一憲
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_217-II_228
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     気候変動による経済的影響を評価する方法として,旅行費用法や仮想市場法の適用が考えられる.しかしながら,これらの手法は個別の事例を対象とした部分均衡分析であり,気候変動による経済的影響の波及効果までは評価できない.そこで,本研究では,旅行費用法において用いられるレクリエーション需要関数に関して積分可能性問題を解くことにより,気候変動により被害を受ける環境質を独立変数として持つ効用関数を導出し,その効用関数を統合した応用一般均衡モデルの理論的枠組みを開発することを目的とする.また,本研究は日本全国の砂浜を対象として,砂浜浸食シナリオを用いた数値実験により,本研究で開発したモデルの挙動を確認し,実証分析への適用可能性を示す.
  • 山口 徹也, 森川 雄貴, 盛岡 通, 尾崎 平
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_229-II_236
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     本研究では,電力負荷平準化による需要家の経済的便益という側面に着目して,電力負荷とPV出力の2つの変動を表すモデルを適用し,PV・BTシステムを設置・稼働した場合の費用効果を算定するモデルを構築した.産業工場の屋根にPVを設置し,BTからの放電をピークカットに用いた場合のパフォーマンスを表すモデルを用い,確率分布を推計し,分析評価を行った.現在のPV,BT価格を前提とした費用効果算定では,総支払額の削減には程遠いという結果となった.PVは現在価格の0.50倍になってもそれを導入することの費用効果がプラスに転じることはないが,BTの現在価格の0.8倍より下がると費用効果がプラスに転じる点が初めて現れた.PVとBTを組み合わせて導入する場合,価格低下が進むにつれて,需要家に費用効果がマイナスになることなく導入できるPVの容量が大きくなることがわかった.また,契約電力超過確率10%程度まで許容すれば,超過による罰則金を支払い,契約電力を削減した利得を多く得られなくとも,PV・BT容量を抑えて,導入費用を低減させる方が費用効果が大きくなることがわかった.
  • 竇 応瑛, 松本 亨
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_237-II_243
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     現在,家庭系一般廃棄物の48%を占める生ごみは,含水率が高く臭気や扱いにくさから来る住民の協力度の問題,再資源化した二次製品の需要確保の問題のため,特に都市部では再資源化が進んでいない.本研究では,生ごみ発酵分解装置を都市部の集合住宅に設置することにより,集合住宅内から排出された生ごみを処理・再資源化する社会実験を実施し,そのライフサイクルの温室効果ガス(GHG)削減効果を推計した.また,その特定の集合住宅の基礎データに基いて,北九州市をモデル都市として,市内の集合住宅全体から排出された可燃ごみ処理時の温室効果ガスの回収・処理システムについてLCA手法を用いて評価した.その際,北九州市の全域の居住形態の可燃ごみ処理システムの現状と比較することにより,資源化システムの優位性を評価した.その結果,北九州市内の集合住宅全体に生ごみ発酵分解装置を導入すると,温室効果ガスの排出量を2.73t-CO2/月削減できる可能性があることを明らかにした.
  • 三島 一仁, 山本 祐吾
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_245-II_253
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     本研究では,和歌山市をケーススタディの対象地として,清掃工場の焼却排熱を活用した下水汚泥のバイオオイル化システムを検討し,エネルギー消費量および温室効果ガス(GHG)排出量を定量的に評価した.その結果,清掃工場と下水処理場の両施設が余剰排熱(電力換算)を介して連携し,さらに下水処理場にバイオオイル化技術を導入するケースでは,それぞれの施設でのエネルギー消費量を上回る焼却排熱とバイオオイルが回収可能であり,エネルギー自立しうるポテンシャルを有することが明らかになった.また,同ケースでは,施設間の連携や新技術の導入を実施しないケースと比較して,GHG排出量が37.3%削減されることがわかった.
  • 長谷川 知子, 松岡 譲
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_255-II_264
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     農畜産業における排出削減対策は,世界排出量半減に向け,とりわけ第一次産業を国内産業の主産業とする途上国における排出緩和において重要な役割を果たすと考えられる.本論文では,農畜産業における温室効果ガスの排出削減評価モデルを開発し,国・地域レベルで農畜産業部門におけるGHG排出緩和のための具体案の検討への適用を提案する.低炭素社会の実現に向け,どのように排出緩和シナリオをデザインするのか,また,削減対策の導入計画をどのように描いたらよいのかについて論じる.さらに,この手法をマレーシアへ適用し,2030年において対策を導入した場合,どの対策により,いくらの費用で,どれだけの排出が削減可能かについて示す.
  • 伊黒 千早, 古市 徹, 石井 一英, 金 相烈
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_265-II_272
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     青森・岩手県境不法投棄事案は県境をまたいでおり, 各々対策を進めたことで, 県境部において1,4-ジオキサンによる汚染地下水の岩手県から青森県への流出問題が存在する. しかし,対策検討当初から,両県の地下水の実態に対する認識が異なるため,共通認識に基づく恒久的な地下水汚染浄化対策は検討されてこなかった.そこで本研究では, 3次元モデルによる数値シミュレーションを行い, 現状の岩手県から青森県へ流出する地下水量とそれに伴う1,4-ジオキサンの拡散状況, また現在考慮されている修復対策を進めることによる地下水流れの変化とそれに伴う汚染拡散予測を示した. これにより,県境部の汚染地下水に対して両県共同で恒久対策を検討する必要性を示した.
  • 荒井 康裕, 堀江 俊樹, 小泉 明, 稲員 とよの, 増子 敦, 田村 聡志, 山本 孝
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_273-II_281
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     本研究では,送配水ポンプの電力使用量を最小にすることを目的とした最適水運用計画について検討する.都市における送配水システムの概要について述べ,省エネルギー化を図るためにはどのような水運用が必要かを明らかにした.需要水量を満たしながら,送配水システム全体の電力使用量を最小化するルート・流量決定問題としてモデル化を試み,混合整数線形計画(MILP: Mixed Integer Linear Programming)法によって定式化した.提案したMILPモデルの有効性を検証するためのケーススタディを試みたところ,各施設からの送配水量の配分比をMILPモデルに基づく水運用方法に変更することで,従来の電力使用量に比べて一日当たり約8%削減できることが明らかになった.
  • 宮里 直樹, 高瀬 陽彦, 森田 哲夫, 青井 透
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_283-II_289
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     本研究では,群馬県内の利根川と水田,および降雨の水質分析調査を行い,灌漑期の利根大堰の無機態窒素濃度変動に及ぼす原因について検討した.利根川の水質分析の結果から,利根大堰において夏季に発生している無機態窒素濃度変動は,毎年発生している可能性が示唆された.また,実水田の水質分析より,水田を通過することで流入水の無機態窒素濃度が低下することが確認できた.また,水質分析と水田への流入量(降雨含む)の計測から,調査対象の水田における無機態窒素除去量が,8月で13.8 mg/m2/day,9月で5.4 mg/m2/dayと推定された.算出した無機態窒素除去量を用い,天狗岩用水供給区域の水田が利根大堰地点の無機態窒素に及ぼす影響について検討したところ,群馬県全域において,灌漑期(8-9月)に利根大堰を流下する無機態窒素量の約0.05~0.34%を除去していることが示唆された.
  • 川本 清美
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_291-II_299
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     気候変動適応策の認知度は低く, その取り組みは遅れている. 一方で, 気候変動に関する多くの情報はメディアを通して, 人々に影響を与えている. 今後ライフスタイルを決定する若年層に対し, 気候変動適応能力を育成することができれば, 高い効果が期待できる. 研究目的は, メディア選好が若年層の気候変動適応能力形成に影響するメカニズムを明らかにすることである. 研究対象は,小学生, 中学生, 大学生の集団とし, 質問紙調査により645の有効回答を得た. 分析手法は, ロジットモデルと共分散構造分析である. 結果として, メディアは順応対策に影響を与えることや, 年齢上昇とともに対処有効性認知が将来の気候変動適応行動に影響する構造が形成されることなどが明らかとなった. 結果を踏まえ, メディアを活用した気候変動適応能力育成への提言を行った.
  • 李 呟俶, 栗栖 聖, 肱岡 靖明
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_301-II_308
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     本研究では,行政機関より提供されている適応策関連情報を市民がどの程度認知し, さらに,気候変動による影響を受けると考えられる水資源,防災,健康,生態系,農業分野のいずれに対し人々が重要と考えているのかを明らかにすることを目的とし,一般市民を対象にしたアンケート分析を実施した.その結果,人々は特に,健康関連分野におけるスギ花粉や熱中症,光化学スモッグといった市民生活に直結する情報をよく認知していた.猛暑と豪雨については約90%の回答者が高い関心を寄せており,これらへの関心の高い回答者ほど,いずれの情報認知も高くなっていた.人々が最も重点をおいている分野は農業分野であり,一方,防災分野への重要度認識が最も低かった.個人属性では,特に防災分野情報に関して男性の方が高い認知を示し,年齢が高くなる程,情報認知が高かった.
  • 松浦 正浩, 江口 徹, 大久保 翔太, 大澤 友里恵, 倉本 北斗, 谷口 健二郎, 林 禎恵, 馬場 健司, 肱岡 靖明
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_309-II_318
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     気候変動への適応のため,農業生産に対する影響予測や品種改良等の技術的適応策が検討されているが,今後の政策的検討に向け,政策分析の第一歩として,作付から収穫,流通,そして消費までを見据えた,ステークホルダー分析の必要性を本稿では提案する.
     本調査は,埼玉県内二地域を対象に,気候変動適応策に関する意向を聞き取り,ステークホルダー分析を実施した.分析の結果,現在の生産者は,輸入農作物との競争や後継者問題など喫緊の課題が存在する中,長期的な気候変動という数十年先のリスクへの対応は優先順位が低いだけでなく,すでに市場の動向や微気候の変化に合わせて作付作物を適応してきた実績があることから,気候変動への危機感が低いため,適応に向けて,未来の農業シナリオを想定した新たな政策プロセスの必要性が明らかになった.
  • 田頭 直人, 馬場 健司
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_319-II_328
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     本稿は,今後の低炭素都市政策に関する知見を得ることを目的として,一般市民を対象とした質問紙調査データの分析により,地方自治体による低炭素型設備の導入義務化等の住民の負担を伴う温暖化政策に対する意向を明らかにした.第一に,導入義務化等の政策を地球温暖化への対処として実施する場合と,ヒートアイランド現象や光化学スモッグのような地域環境問題への対処として実施する場合との意向を比較し,問題間で大きな差異は見られないことを示した.第二に,導入義務化において,既往研究で規制的措置の実施の目安とされた「65%以上の賛成」が得られる条件は,「割高な初期費用の3年以内の回収」であることを明らかにした.
  • 本間 友香里, 近藤 隆二郎
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_329-II_339
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     本研究は,ベルギーゲント市のNPO団体EVA(Ethical Vegetarian Alternative)の活動における特徴や強みを明らかにしたものである.EVAは動物福祉や環境問題のために,ベジタリアニズムを広めることを活動の目的としており,その中でDonderdag Veggiedag(ドンダ-ダーク・フェヒーダーク)という名の週一ベジタリアン運動を展開している.EVAの活動にはフランダース州政府から助成金が出されており,また2009年からドンダ-ダーク・フェヒーダークがゲント市のオフィシャルキャンペーンとなる等,行政との協働関係が構築できている.長い肉食の歴史を持つ国で,ベジタリアニズムを広めるEVAの活動が成功している要因を明らかにするために,EVAの活動における特徴や強みについて検討を行った.
     その結果,EVAは人々に対し,よりポジティブな印象を与える活動や積極的な情報発信,参加型イベントを開催する等,市民が参加し易い活動を心掛けていることが明らかになった.また質の高い内部マネジメントが行われていたり,政治家との繋がりを作り,それを行政との協働関係構築に発展させる等,行政側と市民側の両方にバランスの取れた活動が行われている.これらのことより,EVAの活動は「明るく」,また戦略に基づいた「冷静」なものといえ,活動を成功へと導いていると結論づけられる.
  • 山村 尊房, 大貫 まろみ, 長岡 裕
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_341-II_347
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     近年,登校時に水筒を家から持参する児童が見られ,小学校児童の水分補給手段が変わりつつある.本研究では,水筒を子供に持参させる親の心理的要因を探り,政策的な取り組みにつなげるため,小学生を子供に持つ東京都・愛知県・大阪府・福岡県の母親を対象に,水道水に対するイメージや関心,身近な河川に関するイメージなどと,小学校の水道への不安度などに関して,ウェブアンケートを実施し,不安がどのような心理的要因によって引き起こされるかについて,各都府県毎に共分散構造分析を行い,各都府県を取り巻く水道や身近な河川に関する状況が母親の心理的要因に及ぼす影響について考察を行った.福岡県では過去と現在の河川に対するイメージのギャップが他の三県に比べ大きく,このことが水道水質への不信感に影響を与えていることが示唆された.
  • 牛尾 浩史, 栗栖 聖, 平松 あい, 花木 啓祐
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_349-II_359
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     震災及びその後の津波の影響により生じた電力不足により市民は節電行動の実施を余儀なくされた.本研究では(1)このような状況が市民の環境配慮行動に与えた影響,(2)人々の意識の地域差,(3)電力使用量や実施度とパーソナリティおよび現状認識との関連,を明らかにすることを目的とし,関東地方,大阪市,広島市を対象にアンケート調査を実施した.その結果,市民の節電行動実施度は有意に増加し,関東地方とその他の地域では差が見られた.さらに,人々の意識についても地域差が見られた.特に,節電行動に影響を与えた因子としては,現状認識の中では「気遣い」が,パーソナリティとしては「階層意識」が大きく影響していることが明らかとなった.しかし,一方で,実際の電力削減量は節電行動やこれらの意識を説明変数とした場合にもその説明力は極めて小さかった.
  • 孫 穎, 宮寺 哲彦, 平野 勇二郎, 藤田 壮
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_361-II_369
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     企業の経営活動を持続可能なものに転換するため,グリーンサプライチェーンマネジメント(GSCM)による企業パフォーマンスの適切な評価が重要となる.本研究では,日本の製造企業を対象としたアンケート調査の結果に基づき,GSCMの実施状況を概観し,それによる企業パフォーマンス向上への影響を明らかにした.その結果,日本企業のGSCMは企業内部の取組に重点が置かれており,企業間の連携による取組が遅れていることが示され,サプライチェーン単位のGSCM実施は取組の途中段階にあることが示唆された.またCSRの推進等の取組は持続可能な企業経営に寄与しつつある一方,資源回収とサプライヤーとの連携による企業パフォーマンスへの促進がみられなかった.今後,企業間の連携を促進させ,GSCM実施を各種企業パフォーマンスの向上を図る経営戦略の一環として推進していくことが必要となる.
  • 河瀬 玲奈, 東 章吾, 松岡 譲
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_371-II_381
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     低炭素社会を構築するためには,エネルギー集約型素材の合理的・効率的使用によるCO2排出量の削減が不可欠である.本研究では,エネルギー集約型素材として鉄鋼を取り挙げ,鉄鋼を含む財ストックが提供するサービス(物質サービス)の需要量,財ストック量,鉄鋼需要量,鉄鋼ストック量,鉄鋼生産由来のCO2排出量の推計を行うモデルを構築し,日本に適用し,上述した項目の2005年から2050年までの定量的推計を行った.推計にあたっては,技術効率などを2005年値で固定した「固定シナリオ」の他に3つのシナリオを想定し,それぞれにおける鉄鋼需要とCO2排出量の削減効果の検討を行った.その結果,鉄鋼需要は,「固定シナリオ」においても減少し2005年比で0.85倍となった.物質サービス需要の抑制や素材の代替を考慮した「混合シナリオ」では「固定シナリオ」と比較して2050年で27%の削減効果があった.一人あたり鉄鋼ストック量は,「固定シナリオ」では2050年に10.3ton/人,サービス需要の削減や財ストックの効率改善のみを想定した「対策シナリオ」と素材の代替のみを想定した「技術シナリオ」ではそれぞれ,9.4 ton/人,9.3 ton/人となり,大きな差異はないことが示されたが,混合シナリオでは8.6 ton/人となった.また,CO2排出量は,技術シナリオと混合シナリオで,それぞれ2005年比59%,63%の削減となり,大きな削減効果が得られた.
  • 森田 悠揮, 松井 孝典, 瀧下 雄大, 加藤 悟, 町村 尚
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_383-II_393
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     現在,地球規模で生物多様性が喪失されつつあり,生物多様性損失速度を減少させることや,これらから受ける生態系サービスの公正・衡平な配当を目指すための国際会議である生物多様性条約CBD-COP10が2010年に名古屋で行われた.2010年は生物多様性“年”と言われる程,企業や社会が生物多様性へ注目を集めてきており,この前後で産業セクターが生物多様性保全の取り組みを強化していることが予想される.そこで本研究では,水産農林・紙パルプ業,建設業,食品業を対象として,生物多様性条約CBD-COP10の前後である2009年と2011年の2時点で,企業の生物多様性保全の活動の傾向をCSR報告書から分析し,取り組みの進展度合いの評価や具体的な生物多様性保全活動事例の傾向を類型化した.その結果,生物多様性保全活動を報告する企業が20%から60%,生物多様性保全活動の事例数も55から143に増加したことが明らかになり,また保全活動の内容がより各業種の事業の持続可能性に関連するような内容に変化している傾向を明らかにした.そして今後,各セクターの本業が持つ生態系との繋がりを考慮したうえで,そのセクターにとって本業と相乗効果があるような活動事例が何かを分析し,それらの活動の優良事例や保全効果をデータベース化して共有することの重要性を提案した.
  • 谷口 守, 肥後 洋平, 落合 淳太
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_395-II_402
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     持続可能な都市実現に向けて,環境負荷の少ないコンパクトシティへの期待が一層高まっている.しかし,各都市がどのようにコンパクトシティ実現のための政策を掲げているかは整理されていない.本研究では40都市に渡る都市マスの記述を客観的に読み解き,各都市のコンパクトシティの捉え方や政策の種類,また,相反する記述など様々な面からコンパクトシティ政策の採用実態を時系列的に把握した.分析の結果,大都市圏都市の多くが都市マスにおいてコンパクトシティ政策を多く掲げるようになったことが示された.一方で,人口20万人以下の地方圏都市は,ほとんど掲げられておらず,掲げていても都市の低炭素化を意図していないものや,郊外部の開発を容認する政策を掲げている都市も見られることが明らかになった.
  • 伊勢 晋太郎, 谷口 守
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_403-II_410
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     持続可能性を高めていくためには,適切な評価指標を継続して用いる事が必要不可欠であると考えられる.本研究では,持続可能性指標の取り組みが進んだ複数の国を対象に,経年的な指標の変遷を分析し,各指標の継続性を明らかにした.この結果,持続可能性の解釈が,当初重視されていた環境面から社会面へと変わったことが,指標の変遷から定量的に示された.加えて,指標の改訂によって一国での改善が困難な経済面の指標が削減され,政府の施策で改善が可能な社会面の指標が継続して用いられていることが明らかとなった.更に個別に見ると,政治的影響を受けて指標が利用されなくなる国や,当初設定された指標の目標値が削除されてしまう国があることが明らかとなった.
  • 岩見 麻子, 大野 智彦, 木村 道徳, 井手 慎司
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_411-II_418
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     本研究では,公共事業計画策定過程の議事録に対してテキストマイニングを用いて議論内容を定量的に把握するための基礎的研究として,分析対象とする語の恣意性を排除した選定手法(DFIMF)を含む,話し合われたテーマとその変遷を把握するための分析手法の開発を試みた.開発した手法を既存のTFIDFとともに淀川水系流域委員会本委員会の議事録に適用した結果,議事録から議論内容を把握することに関して,TFIDFに対するDFIMFの優位性を示すことができた.また,同委員会において話し合われたテーマは大きく「水需要管理」や「住民参加」「生態系保全」から「ダム建設」と「洪水対策」へ変化し,再び「住民参加」に,その後「計画高水位」と「洪水対策」,最終的に「進捗点検」へと変化していったことを定量的に把握することができた.
  • 林 優里, Janice SIMSON, 五味 馨, 松岡 譲
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_419-II_430
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     本研究では,実都市を対象とし複数の環境目標の達成を目指す環境都市を構築するための政策デザインとその実装へのアプローチを提案し,これをマレーシアのプトラジャヤに適用した.基準年を2007年,目標年を2025年とし,低炭素社会構築,循環型社会実現,都市気候緩和の三つの環境目標に向けて,その達成に必要な対策の導入量,施策別の温室効果ガス(GHG)排出削減効果,および三つの目標への施策統合効果の推計を行った.さらに施策・事業の吟味を行うため,利害関係者を集めた関係者会合を行い,計画案の確定やロードマップ策定および詳細設計を開始するなど実体化に向けた歩みを始めている.
  • 坂本 麻衣子, 佐藤 亮
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_431-II_441
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     近年の住民参加の機運の高まりから,計画策定過程の間に如何に住民参加を求めるべきかを検討し,合意形成を図る方法の構築が必要であると考えられる.本研究では,公共事業における円滑な合意形成支援を目的とし,まず,住民の視点での代替案の評価と合意形成を図るための多基準評価システムを水辺に関するアンケートに適用する.次に,合意形成という観点で整備の対象とすべき優先性の高い要素を明らかにする.そして,アンケート回答者に実際に水辺に関する話し合いを実施してもらい,分析結果として得られた優先性の高い要素の提示の有無によって,話し合いの結果や過程がどのように異なるかを明らかにすることで,多基準評価システムの適用可能性について検証する.
  • 馬場 健司, 松浦 正浩, 篠田 さやか, 肱岡 靖明, 白井 信雄, 田中 充
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_443-II_454
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     防災・インフラ分野における気候変動適応策を題材として,当該政策に関与するステークホルダー(SH)の利害関心を分析した.得られた知見は以下のとおりである.まず,適応策という言葉も内容もすべてのSHに知られておらず,適応策を推進する意識も体制も整っていない.つまり,「適応策への認知不足」と「温室効果ガス削減というロックイン状態」,「アジェンダ設定の困難さ」といった課題が示唆される.前者の解決には,SH間の科学的事実の共有や,適応策と緩和策の関係性を正確に伝えるコミュニケーション戦略が必要である.後者については,部局横断的組織による政策統合の実現と,長期的な予測結果に基づいたリスク管理的手法を行政計画に導入するなどの計画立案のあり方を変えることが求められる.
  • 池野 優子, 松井 孝典, 加藤 悟, 町村 尚
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_455-II_464
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     現在竹林の放棄が進み,様々な問題が生じている.そこで本研究は竹林の適正な管理の支援を目的に,竹林へのアプローチと管理手法を示し,竹材資源量推計サブモデルと資源特性に応じた利用オプションの環境・経済評価モデルを開発した.具体的には,モデルの入力は地域の竹林面積と人口等の地域情報,出力は低炭素効果や生物多様性影響,地域内食糧自給ポテンシャル,竹林管理コスト等である.モデル内部構造は竹林管理に関するアプローチ,管理手法,利用オプションである.利用者は農地面積や制限資金額等の入力により,地域特性に応じた竹林管理の評価が可能となる.これを兵庫県における都市型地域である神戸市及び農業が盛んな淡路地域を事例として適用した結果,それぞれの地域特性を反映した評価結果より,代替シナリオ選択を通した竹林管理方略作成に有用であると確認された.
  • Kosuke KAWAI, Luong Thi Mai HUONG, Masahiro OSAKO
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_465-II_471
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     Reliable data are necessary to evaluate the current status of municipal solid waste (MSW) management and improve current treatment systems. Many developing countries, however, lack reliable data on MSW. The objectives of this study were to accumulate data on MSW in urban areas of Vietnam in 2008 in order to confirm whether the fundamental data existed at the local level, and to evaluate the reliability of the data obtained from waste treatment facilities. Questionnaires about MSW management were distributed to 90 "urban environment companies" (waste management companies) that are in charge of managing MSW in urban areas of Vietnam. A top-down approach was used in the survey, which may have contributed to the high response rate (92%). The MSW collection amounts per person per day were compared with maximum and minimum values in published data; any values above or below these values were corrected if errors were identified in data collection or entry. The total reported population with MSW collection service was 19.1 million, which is about 22% of the total population of Vietnam. The total amount of MSW collected was about 5,335,000 t, 96% of which was transported to landfill sites and 4% to composting sites. The proportion of organic waste in terms of physical composition was 65% on average. Data on the population with MSW collection service and MSW collection amounts in Vietnam were more variable (less reliable) than those in Japan, and the results of our reliability analysis suggest that installation of weighbridges at treatment and disposal facilities would improve the reliability of MSW collection data in Vietnam.
  • 加用 千裕, 橋本 征二, 森口 祐一
    2012 年 68 巻 6 号 p. II_473-II_484
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
     発展途上国における今後の紙・板紙の消費増大を抑制し低消費型の発展経路を検討するために,先進33カ国を対象としたクラスター分析および判別分析を行い,低消費経路国と高消費経路国の違いを決定する社会経済因子を分析した.その結果,教育水準,経済水準,都市化は,紙・板紙の消費に影響する社会経済因子であるが,新聞用紙,印刷・情報用紙,衛生用紙,段ボールの用途間で消費抑制効果にトレードオフが生じることが明らかになった.新聞用紙,衛生用紙,段ボールは,高価格になることによりそれらの消費抑制に効果があった.第三次産業拡大の抑制は,印刷・情報用紙と衛生用紙の消費抑制に効果があるが,農業の活性化によって食料生産が増加すると段ボールの消費を誘発する可能性があることが分かった.
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