土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
環境システム研究論文集 第40巻
日本における低炭素社会と脱物質化社会構築の可能性について -鉄鋼を例として-
河瀬 玲奈東 章吾松岡 譲
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2012 年 68 巻 6 号 p. II_371-II_381

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抄録

 低炭素社会を構築するためには,エネルギー集約型素材の合理的・効率的使用によるCO2排出量の削減が不可欠である.本研究では,エネルギー集約型素材として鉄鋼を取り挙げ,鉄鋼を含む財ストックが提供するサービス(物質サービス)の需要量,財ストック量,鉄鋼需要量,鉄鋼ストック量,鉄鋼生産由来のCO2排出量の推計を行うモデルを構築し,日本に適用し,上述した項目の2005年から2050年までの定量的推計を行った.推計にあたっては,技術効率などを2005年値で固定した「固定シナリオ」の他に3つのシナリオを想定し,それぞれにおける鉄鋼需要とCO2排出量の削減効果の検討を行った.その結果,鉄鋼需要は,「固定シナリオ」においても減少し2005年比で0.85倍となった.物質サービス需要の抑制や素材の代替を考慮した「混合シナリオ」では「固定シナリオ」と比較して2050年で27%の削減効果があった.一人あたり鉄鋼ストック量は,「固定シナリオ」では2050年に10.3ton/人,サービス需要の削減や財ストックの効率改善のみを想定した「対策シナリオ」と素材の代替のみを想定した「技術シナリオ」ではそれぞれ,9.4 ton/人,9.3 ton/人となり,大きな差異はないことが示されたが,混合シナリオでは8.6 ton/人となった.また,CO2排出量は,技術シナリオと混合シナリオで,それぞれ2005年比59%,63%の削減となり,大きな削減効果が得られた.

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© 2012 公益社団法人 土木学会
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