抄録
防災・インフラ分野における気候変動適応策を題材として,当該政策に関与するステークホルダー(SH)の利害関心を分析した.得られた知見は以下のとおりである.まず,適応策という言葉も内容もすべてのSHに知られておらず,適応策を推進する意識も体制も整っていない.つまり,「適応策への認知不足」と「温室効果ガス削減というロックイン状態」,「アジェンダ設定の困難さ」といった課題が示唆される.前者の解決には,SH間の科学的事実の共有や,適応策と緩和策の関係性を正確に伝えるコミュニケーション戦略が必要である.後者については,部局横断的組織による政策統合の実現と,長期的な予測結果に基づいたリスク管理的手法を行政計画に導入するなどの計画立案のあり方を変えることが求められる.