抄録
急激な工業化・都市化による大気質の悪化と,地球温暖化というグローバルな課題の両方に直面しながら経済発展をめざすアジア諸国において,大気汚染物質と二酸化炭素を同時に削減することがますます重要になっている.そのようなコベネフィット(共便益)型の環境政策に対する注目は近年高まっているものの,過去の事例を検証しその効果や実現プロセスを分析した研究は少ない.本研究では,川崎市の公害の歴史に着目し,大気汚染防止対策が市内の大気環境の改善に大きく寄与しただけでなく,産業の電力集約度の低減にも寄与していたことを統計的に明らかにした.特に,市と臨海部の各大手工場との間に締結された大気汚染防止協定や,予防原則に基づく環境影響評価条例の導入といった要素が影響力を持っていたことから,政策のコベネフィット形成に関する考察を行った.