2012 年 68 巻 7 号 p. III_175-III_183
これまで水使用料金設定に関する研究の多くは,一律何パーセント調整するかの議論が中心であり,水使用量に対して単価が異なることに着目した事例は少ない.水使用料金体系は地域の産業活動に少なからず影響を与えており,水使用量が異なる産業を考慮した望ましい設定を検討することが重要である.本研究では,全国の下水道事業体を対象とした実態分析を踏まえ,望ましい料金体系の仮定を設定する.その上で地域経済モデルを構築し,2都市を対象に水使用料金設定が地域経済に与える影響を比較することで検証した.その結果,製造業が中心の地場産業地域では,水使用量に関わらず均一の料金単価に設定するほうが,そうでない地域と比較して等価変分量が高くなることを明らかにした.