2012 年 68 巻 7 号 p. III_483-III_492
本研究は炭素・窒素安定同位体比を用いて,2つの河口干潟における堆積有機物の起源と底生生物群集の餌資源を明らかにすることを目的に研究を行った.干潟全体の堆積物の炭素安定同位体比は河口干潟上流のヨシ周辺では低く,河口干潟下流では高い地点が分布しており,河口干潟下流における堆積物の陸起源有機物の割合は干潟上流側より低い値を示した.底生生物の生息していた堆積物は陸起源有機物の割合が高かったが,底生生物は陸起源有機物を餌資源として利用していなかった.また,底質環境が異なっていても底生生物群集はMPOMと底生珪藻を摂餌・同化しており,底生生物群集は生息場の底質環境の違いに対応している一方で,利用可能な餌資源の違いにはほとんど対応していないことが示唆された.