2013 年 69 巻 3 号 p. 105-114
本研究では,2011年3月の福島第一原発事故で土壌や建物,植物などに沈着・吸着した放射性物質(主にセシウム134と137)に関して,食物や土壌による内部被曝,および外部被曝をそれぞれ加算し,1年間の摂取や曝露による生涯の被曝線量を求めた.経路ごとに比較してみると,土粒子の経口と吸入による摂取量が無視できる程度となり,食品摂取と地表面からの外部被曝による被曝線量が比較的多い結果となった.食品を加えた総合の被曝線量を1 mSv/y以下に抑えるためには,今回の事故由来の空間線量を0.2 μSv/h程度にする必要性が示唆された.今回提示した様に土地用途に基づく,ケースごとのリスク評価をすることで,除染やリスク管理の優先順位を決定することができ,合理的な対策を選定するための手法を提示することが可能になると考えられる.