2013 年 69 巻 5 号 p. I_161-I_170
温暖化影響予測研究ではその不確実性の定量評価が重要課題になっている.その認識をふまえ,温室効果ガス排出シナリオや全球気候予測の不確実性に由来する影響予測の不確実性を論じる研究が近年増えてきている.本研究では,排出シナリオ・全球気候予測情報に加え新たに「地域気候モデル(RCM)を用いたダウンスケーリング(DS)」の手法選択に由来する不確実性までも考慮して影響予測を実施した.影響予測対象としては我が国のブナ林分布適域を扱った.全国的概観としては全球気候予測に比してDSの手法選択による不確実性幅は小さいが,地域規模で見た場合にはRCM間の差異は無視出来ず,地域別の保全対策の検討に際してはDSの手法選択による不確実性についても考慮すべきとの結論が得られた.