抄録
鉄鋼の需要が急増する中国とインドを対象に,SRESの4つのシナリオの一人当たりGDPを用いて鉄鋼需要の中長期予測を行い,スクラップの利用可能性とその温室効果ガスの排出抑制効果を検証した.推計の結果,2010年から2050年の累積で,鉄鋼の需要(みかけの消費量)に対し,用途毎の利用上限も考慮したスクラップによる供給割合は,中国で34%~59%,インドで28%~41%にとどまった.鉄鋼製造による二酸化炭素の排出は,2010年から2050年の累積で,転炉と電炉の割合を各国の実績をもとに推計した場合と,スクラップを最大限電炉鋼として活用する場合を比較すると,中国で9%~13%,インドで26%~32%の排出削減が可能という結果となった.他方,2010年と2050年を比較すると,スクラップを最大限活用してもC02の排出量は中国では2.3~4.8倍,インドでは1.7~3.8倍に増加する結果となった.
両国ともに2050年時点でもスクラップの活用による温室効果ガス排出低減効果は限定的であり,それ以外の対策,特に高炉/転炉鋼の温室効果ガスの排出量を下げるための取り組みが重要と考えられる.