2013 年 69 巻 6 号 p. II_85-II_92
地方都市において,路面電車は中心市街地活性化や温暖化対策として注目されている.一方で,高齢化や財政難問題を抱える中,利用者の選択要因を把握し,確保し続けることが地域公共交通維持に重要である.本研究の目的は,地域固有のソーシャル・キャピタル(SC)構造を考慮して,路面電車利用者の交通選択意識構造を明らかにすることである.対象は,北海道函館市のSC構造が異なる3地区である.質問紙調査により,560の有効回答を得た.分析手法は,ロジットモデルと共分散構造分析である.結果として,地域愛着がSCを形成し,結束型地区ではSCのつきあい・交流,信頼要素,接合型地区ではSCの社会参加要素が直接,路面電車利用に影響を与えることなどを明らかにした.地域愛着やSCは,費用便益や実行可能性より強固な影響を与えていた.