2013 年 69 巻 7 号 p. III_291-III_299
本研究では自然水中に広く存在する腐植物質が第一鉄(Fe(II))の酸化速度に及ぼす影響を解明することを目的として, pH 8における溶存酸素(02)および過酸化水素(H2O2)によるFe(II)の各酸化速度定数(kO2およびkH2O2)を測定した. 酸化実験より得られた速度定数はいずれも腐植物質の種類により異なったが, 02による酸化速度は腐植物質存在下で増大した. また, kH202と腐植物質中の芳香族炭素割合およびカルボキシル基量との間にそれぞれ有意な相関が認められた. 本研究の結果から, 腐植物質との錯形成はFe(II)の酸化速度に影響を及ぼし, その程度は腐植物質中の鉄結合部位の種類, 量, 荷電特性等に依存することが示唆された.